第3回|受診状況等証明書の見方(初診日を証明できているか確認しよう)
こんにちは。社会保険労務士の菅野です。
このシリーズでは、障害年金の手続きをご自身やご家族で進める方が、障害年金請求の全体像や手順、各作業での注意点を理解できるように、全12回で解説しています。
第3回の今回は、受診状況等証明書の「見方」について解説します。
前回は、受診状況等証明書の取得方法や依頼のポイントについてお話をしました。まだご覧になっていない方は、前回の内容もあわせて確認すると理解が深まります。
YouTube動画
受診状況等証明書の役割をもう一度確認
受診状況等証明書は、障害年金において非常に重要な「初診日」を証明するための書類です。
そのため、取得した証明書を確認するときは、
「この内容で初診日を証明できるか?」という視点を常に持ってチェックすることが大切です。
なお、そもそも受診状況等証明書が取れない場合の対処法については、第4回で詳しく解説します。初診日が証明できずにお困りの方は、次回の内容もぜひご覧ください。
受診状況等証明書の様式(どこに何が書いてある?)
受診状況等証明書はA4サイズ1枚の書類ですが、確認すべきポイントは意外と多いです。ここでは、上から順番に項目を見ていきます。
主な記載項目
- 氏名
- 傷病名
- 発病年月日
- 傷病の原因または誘因
- 発病から初診までの経過
- 紹介状の有無
- 初診年月日
- 終診年月日
- 終診時の転帰(治癒・転医・中止など)
- 初診から終診までの治療内容と経過の概要
- 作成の根拠(診療録等)
各項目のチェックポイント(間違いや見落としが多いところ)
① 氏名:誤字があれば修正してもらう
氏名に誤字がある場合は、必ず修正してもらいましょう。
なお、受診当時が旧姓だった場合などは、旧姓のままでも特に問題ありません。
② 傷病名:今の病名と一致しないことはよくある
受診状況等証明書に記載される傷病名は、カルテに基づき医師が記載します。
ここでよくあるのが、
- 今、障害年金を請求しようとしている病名
- 受診状況等証明書に書かれた当時の病名
が一致しないケースです。
特に精神疾患では、経過の中で病名が変化することは非常に多く、これは珍しいことではありません。
障害年金では、病名が変わっていても同一傷病として判断されることが多いため、
「病名が違うから初診日にならない」というわけではありません。
ただし、全く関係のない別の病気での受診は初診日にはなりませんので、そこは注意が必要です。
③ 発病年月日:アバウトな記載でも問題なし
発病年月日は、事故など突発的なケースでなければ、年月日まで特定するのが難しいことが多いです。
そのため、
- ○年頃
- ○年○月頃
というような記載になることもよくあります。
病院側でも把握できていない場合は「不詳」「不明」となることもありますが、それ自体は問題ありません。
④ 傷病の原因または誘因:別の病名が書かれている場合は注意
原因・誘因欄には、発症の原因が端的に書かれます。
- 精神疾患:職場のストレスなど
- 外傷:交通事故など
- 心疾患:高血圧など
ここも「不詳」とされることは多く、それ自体は問題ありません。
ただし注意したいのは、ここに別の傷病名が書かれている場合です。
その傷病で既に受診歴がある場合、
「その受診が今回の初診日にあたるのか?」を検討する必要が出てきます。
また、誘因となった傷病と現在の傷病との関係については、障害年金では相当因果関係という考え方で判断される場合があります。
これは非常に複雑で、障害年金独自のルールもあるため、自己判断せず必ず年金事務所等の窓口に相談してください。
例として、高血圧や糖尿病 → 脳梗塞(脳血管疾患)の場合は医学的には因果関係がありますが、障害年金制度上では相当因果関係が認められず、脳梗塞の初診日にはならないとされることがあります。
一方、糖尿病 → 慢性腎不全の場合は相当因果関係が認められ、糖尿病での受診が初診日となる場合があります。
この判断は難しいため、必ず窓口と連携して進めましょう。
⑤ 発病から初診までの経過:前医受診の記載がある場合は要注意
この欄には、
- 発症からその病院を受診するまでの経過
- 初診時の状況
が文章で記載されます。
ここで注意したいのは、作成病院より前の医療機関(前医)についての記載があるケースです。
たとえば、
- 実はもっと前に別の病院を受診していたが忘れていた
- 初診病院のカルテがなく、2番目の病院で証明書を書いてもらっている
などの場合です。
前医の記載がある場合には、
- 紹介状の有無の記載
- 紹介状の写しの提供
- 前医の情報が「いつ時点の情報」かの記載
が必要になります。
特に「いつ時点の情報か」のカッコ書きは、漏れていることが多いので、記載漏れがあれば追記を依頼しましょう。
⑥ 初診年月日・終診年月日・転帰
ここには、その医療機関での最初と最後の受診日が記載されます。
終診時の転帰は、
- 治癒
- 転医(紹介して転院)
- 中止(自己判断で通院終了など)
のいずれかに丸がつきます。
⑦ 治療内容と経過:空欄や別紙でも問題ない場合がある
「発病から初診までの経過」と「初診から終診までの治療内容及び経過の概要」は、医師によってはどちらかを空欄にして、まとめて記載する場合もあります。
また、情報量が多い場合は別紙参照になることもあります。
必要な情報が書かれていれば、これらは問題ありませんのでご安心ください。
⑧ 作成根拠:ここが最重要ポイント
最後の欄には、この受診状況等証明書が何を根拠に作成されたかが示されます。
カルテが残っている場合は、通常「1 診療録より記載したものです」に丸がつきます。
そして、証拠性が高く、書類単体で初診日証明として認められやすいのは、基本的に1に丸がついている場合です。
もし、2~4に丸がついている場合は、この書類単体では初診日判断の信頼性が不足することがあります。
その場合には、
- 次に受診した病院の受診状況等証明書を取得する
- 参考資料を追加して初診日を立証する
といった対応が必要になることがあります。
まとめ:取得したら必ず内容を確認し、疑問があれば窓口へ
受診状況等証明書はA4一枚の書類ですが、確認ポイントが多く、内容次第では手続き全体に影響します。
取得したら必ず、
- 初診日が証明できる内容か
- 前医の記載がないか
- 作成根拠が診療録(カルテ)か
- 疑問点や不自然な点がないか
をチェックし、疑問があれば必ず窓口に相談しましょう。
次回【第4回】は、「受診状況等証明書が取れない場合の対処法」について解説します。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。






