障害年金の請求を進めていると、審査の途中で 「返戻(へんれい)」 と呼ばれる差し戻しが起こることがあります。
「返戻」という言葉は一般的には馴染みがないため、書面上は返戻と書かれていても、実際には
- 追加書類の提出依頼
- 補正(訂正)
- 照会(確認)
といった意味合いで使われていることが多いです。
突然書類が戻ってくると不安になりますが、返戻は 不支給が確定したという意味ではありません。
一方で、返戻は単なる書類の確認にとどまらず、対応次第で結果が変わる重要な局面として出てくることが多いのも事実です。
このページでは、返戻(差し戻し)の意味と種類、照会(医師照会)との関係、返戻が来たときの確認ポイントを、分かりやすく整理します。
返戻(へんれい)とは
返戻とは、障害年金の審査中に、年金事務所や審査機関から、
- 書類の修正(補正)
- 追加提出
- 追加の確認(照会)
を求められることを指します。
返戻は「何かを提出すれば審査が進む」という意味であり、返戻=不支給ではありません。
ただし、返戻の内容によっては、その後の 認定・不認定(不支給)を左右する局面になっていることがあります。
照会(医師照会)と返戻の関係
障害年金の審査では、返戻(差し戻し)と似た言葉として、「照会」や「医師照会」が出てくることがあります。
これは、審査側が判断を進めるために、追加で確認したい点が出てきたときに行われるものです。
返戻の中身が、実質的に
- 診断書の内容の確認
- 日常生活能力の評価の確認
- 就労状況との整合性の確認
など、医師照会につながる論点を含んでいることもあります。
そのため、返戻が届いたときは「単なる追加書類」と考えるのではなく、審査側がどの点を確認しようとしているのか(照会の意図)を読み取ることが重要です。
返戻は大きく3種類あります
返戻は、原因や意味合いが一つではありません。
当事務所では、返戻を次の3つに整理して考えています。
1.単純ミス(形式不備)の返戻
これは、内容の是非というより 書類の形を整えるための返戻です。
たとえば次のようなケースがあります。
- 記入漏れ(記載が必要な欄の未記入)
- 添付漏れ(必要書類の提出漏れ)
このタイプは、返戻の中では比較的シンプルですが、慌てて提出して内容を崩す必要はありません。
提出すれば障害年金は認定になるにも関わらず、返戻が来たことで不支給だと思ってしまい、放置されてしまっている方もいらっしゃいますので、落ち着いて、求められているものを正確に整えることが大切です。
2.認定を左右する「重要局面」の返戻(最も多い)
返戻の中で多いのがこのタイプです。
つまり、単なる記入漏れではなく、審査側が 判断を確定するための材料を求めている状態です。
たとえば次のような論点で返戻されます。
- 初診日や受診状況について、追加の確認が必要
- 診断書の記載が足りない/判断が難しいため追加資料が必要
- 申立書と診断書、就労状況などの間に齟齬がある
- 障害状態の評価に必要な説明が不足している
このタイプは、対応次第で結果が変わることがあります。
特に注意が必要なのは、指示通りの対応や資料提出を行ったり、良かれと思って追加資料や説明を書き足したことで、
良くない認定結果に流れてしまうケースです。
返戻の“意図”を読み違えると、次のようなことが起こり得ます。
- 追加提出した内容が、他の書類と矛盾する
- 説明が増えたことで、審査側が別の疑問を持つ(照会が増える)
- 重要論点から外れた資料を出してしまい、判断材料にならない
重要局面の返戻ほど、「言われたものを出す」だけではなく、全体の整合性を崩さない設計が求められます。
また、返戻の内容によっては、指示された内容とまったく同じ対応を取ることが正解とは限りません。
審査の意図を正確に読み取り、状況に応じて対応方針を組み立てていく必要があります。
実は返戻の際に、事前に担当者への相談を行い、指示されていることとは異なる対応を行うことは可能なのです。
3.認定方向に進めるための返戻(稀だが存在)
頻度は高くありませんが、返戻の中には、「この点が補えれば認定できる」という方向性で追加提出を求められるケースもあります。
ただしこのタイプも、対応を誤れば逆転することがあります。
「認定のための返戻っぽいから大丈夫」と自己判断せず、提出内容を慎重に組み立てることが重要です。
返戻の期日(期限)について
返戻が届くと、多くの場合、書面上には 「2週間後」 の期限が設定されています。
これは、返戻の手続上、機械的に2週間程度の期限が付く仕様になっているためです。
そのため、返戻の期限は、
- 厳密に守らなければ不利になる
- 期限を過ぎたら即アウト
という性質のものではありません。
従って、期限に間に合わせることよりも、審査側の意図に対して時間がかかっても正しい対応を行うことが重要です。
ただし、返戻の内容によっては確認が必要になることもありますので、
- 医療機関の対応に時間がかかる
- 何を出せばいいか判断できない
という場合は、早めに年金事務所へ確認するか、専門家へ相談することをおすすめします。
返戻が来たときに、最初に確認する5つのポイント
返戻が届いたときは、次の5点を順に確認してください。
1.何を求められているか
- 単なる修正(補正)なのか
- 追加提出なのか
- 追加の説明を求められているのか
- 医師への照会なのか
2.審査側が見ている論点はどこか
- 初診日・受診状況
- 障害状態(症状・日常生活・就労)
- 診断書の記載
- 書類間の整合性
3.指示通りの対応が自分が望む結果につながるのか
返戻対応は、目指している結果への分岐点となっていることが多いです。
仮に指示通りに従ったとしても、それは自分の意志で決定したことになりますので、指示されたからそうした、後から実は納得していなかったは通用しません。
4.提出方法(窓口/郵送など)
提出方法が指定されていることがあります。
提出ルートが違うと、伝達ミスや手戻りの原因になることがあります。
5.必要なら「補足の書面」で伝える
返戻は書面で進むため、意図が伝わりにくいことがあります。
必要に応じて、補足の書面でこちらの事情や説明の要点を整理して伝えると、審査が進みやすくなります。
返戻対応で失敗しやすいパターン
返戻対応でよくある失敗は、次のようなものです。
- 返戻の意図を読み違え、論点とズレた資料を出す
- 指示に従って、請求方針を変えてしまう
- 医療機関への依頼の仕方を誤り、必要な情報が出てこない
- 不安から、関係ない資料まで大量に提出してしまう
返戻は「追加で出すほど良い」という単純な話ではなく、審査側が求めている“判断材料”を、矛盾なく整えることが最重要です。
また、返戻の内容によっては、審査側から
「初診日をこう変えてください」
といった指示が出てくることがあります。
しかし、初診日は障害年金において非常に重要な要素であり、安易に変更してしまうと、次のような重大な影響が出る可能性があります。
- 障害認定日が変わってしまう
- 請求のタイミングが変わってしまう
- 保険料納付要件の判断が変わってしまう
- そもそも請求が成立しなくなる
そのため、返戻で初診日に関する指示が出た場合は、その指示にそのまま従うのではなく、慎重に検討することが重要です。
当事務所の返戻対応サポートについて(返戻後からのご依頼も可能です)
当事務所では、返戻が届いた後の段階からのご依頼にも対応しています。
返戻対応では、次のような点を重視しています。
- 返戻の内容を読み解き、審査側の論点を整理(照会の意図も含めて確認)
- 提出済み書類との整合性を点検し、適切な対応を検討
- 必要書類の収集方針を立て、医療機関への依頼も含めて整理
- 必要に応じて、補足の書面で意図を明確化
「返戻(差し戻し)が来たが、何をどう直せばいいか分からない」
「自分で出したが、ここからが不安」
という場合は、返戻書面を確認した上で、対応方針をご提案できます。






