第4回|初診の医療機関で受診状況等証明書が取れない場合の対処法
こんにちは。社会保険労務士の菅野です。
このシリーズでは、障害年金の手続きをご自身やご家族で行われる方が、障害年金請求の全体像や手順、各作業においての注意点が分かるように、全12回で解説しています。
第4回の今回は、「初診の医療機関で受診状況等証明書が取れない場合の対処法」について解説します。
前回は、受診状況等証明書の見方(チェックポイント)についてお話しました。まだご覧になっていない方は、ぜひ第3回もあわせて確認してみてください。
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受診状況等証明書が取れない…このケースは非常に多いです
受診状況等証明書は、障害年金の手続きにおいて初診日を証明するための書類です。
なお、診断書を取得する病院と受診状況等証明書を取得する病院が同じ場合には、診断書から初診日が確認できるため、受診状況等証明書は不要となることもあります。
しかし、複数の医療機関を受診している場合は、基本的に初診日の病院で受診状況等証明書を取得し、初診日を証明する必要があります。
ここで多くの方が直面するのが、
- 初診日が古くてカルテが廃棄されている
- 病院自体が閉院している
というケースです。
医療機関にはカルテの保存義務があり、原則として最終受診日から5年とされています。
そのため、初診日が古い場合には、カルテが残っておらず受診状況等証明書が作成できないことが珍しくありません。
しかし、障害年金では初診日が非常に重要ですので、何らかの形で初診日を証明していく必要があります。
初診の病院で証明書が取れない場合、まずやること
①「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成する
初診病院で受診状況等証明書が取得できないときは、
その理由を説明するために「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成します。
次にやること:2番目の病院の記録を確認する
次に、2番目に受診した医療機関を確認します。
ここでやるべきことは、
2番目の医療機関の記録に、初診病院の名称や初診日に関する記載が残っていないか
を探すことです。
もし記録に初診病院の情報が残っている場合は、
- 受診状況等証明書にできるだけ具体的に記載してもらう
- 紹介状(診療情報提供書)などの保存があれば、写しも提供してもらう
そして、それらを窓口に提出します。
2番目にも記録がない場合はどうする?
2番目の医療機関にも初診病院の記録がない場合は、
- さらに「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成し
- 次に受診した医療機関へ同じ作業を行う
という流れになります。
つまり、
初診日の情報が得られるまで「次の医療機関」へ確認を繰り返していく
ということになります。
実は「受診歴が多いほど有利」なこともある
「病院をたくさん受診していると手続きが難しい」と思われがちですが、
初診日の証明に関しては、実は受診歴が多いほど可能性が上がる場合があります。
なぜなら、
- 1か所目が閉院
- 2か所目もカルテ破棄
- 3か所目には初診の情報が残っている
というように、初診日の記録が残っている病院の候補が増えるからです。
注意点:2番目以降の記録は「いつ記録されたか」が重要
2番目以降の医療機関の記録を使う場合、重要なのは、
その記録が「いつ記録されたものか」
という点です。
原則として、5年以上前の記録である必要があります。
なぜ5年以上前が必要なのか(信憑性の問題)
初診病院からの紹介状などがない限り、
2番目以降の医療機関に残っている初診病院情報は、基本的に本人の申告(供述)が元になっています。
つまり、証拠能力が弱いものです。
そのため、
- 5年以上前にすでにその情報が記録されている
→ 将来の障害年金受給を見越して嘘を記録したとは考えにくい
→ 信憑性が高いと評価される
という考え方で審査が行われています。
初診日が「日付まで特定できない」場合でも大抵なんとかなります
2番目以降の医療機関の記録に、初診日が
- 「〇年〇月頃」
- 「〇年頃」
- 「〇歳頃」
のように、曖昧な形でしか残っていないことは多いです。
ここでよくある相談が、
「日付まで分からないと障害年金は受給できないですか?」
というものですが、結論としては、(年金記録の状況によりますが)大抵なんとかなります。
例えば、
- 初診月まで分かる場合 → 初診日を月末とする取り扱い
- 季節(春夏秋冬)まで分かる場合
- 年まで分かる場合
など、一定のルールが通達等で定められています。
ただし、曖昧さが大きいほど年金記録の状況次第になるため、
このあたりは専門家対応が必要となるケースが増えてきます。
よくある誤解:「初診日が18歳6か月より前」の場合
初診日が
18歳6か月より前(年金制度未加入期間)
にある場合、取り扱いが少し異なります。
なぜ審査が緩くなるのか
初診日の特定が重要なのは、
- 保険料納付要件の判断
- 障害認定日(初診日から1年6か月)の確定
に必要だからです。
しかし、20歳前は国民年金に加入できないため保険料納付要件は関係ありません。
また、初診日が18歳6か月より前の場合、障害認定日は一律で20歳になります。
つまり、18歳6か月より前であれば、細かい初診日の特定ができなくても、
2番目以降の医療機関の受診日が18歳6か月より前であること
を証明できれば、それだけで初診日として認められることがあります。
※ ただし、認定日が1年6か月より早く到来する傷病の場合は基準が変わるので注意が必要です。
初診日の証明には他にもいろいろな方法がある
初診日の証明には、状況に応じて以下のような方法が用いられることもあります。
- 第三者証明
- 始期終期による証明
- 健康診断記録の活用
ただし、第三者証明は現実的にはハードルが高いことも多いです。
これらの取り扱いが記載された通達もありますので、詳しく知りたい方は概要欄(動画説明欄)に掲載されている情報も確認してみてください。
最後に:医療機関への依頼の仕方が重要です
初診の病院で依頼する場合は問題になりにくいのですが、
2番目以降の医療機関にお願いするときに多いのが、次のように断られてしまうケースです。
「うちは初診日じゃないので書けません」
この断り方が起こる原因のひとつが、依頼時に
「初診日証明を書いてください」
と伝えてしまうことです。
2番目以降の病院からすると、
「自分のところを初診日にして手続きしたいのでは?」と誤解されてしまいます。
受診状況等証明書は、名称の通り、
その医療機関での受診状況を証明してもらう書類です。
初診日は、提出された資料をもとに審査で最終的に決定されます。
したがって依頼時は、
- 「初診日証明」ではなく「受診状況等証明書」と正確に伝える
- 初診病院で取得できない事情を説明する
- 必要なのは「過去の受診に関する情報」であることを理解してもらう
ことが大切です。
実際に、初診日証明と言って断られた方の案件でも、私から趣旨を説明することで作成してもらえたケースは複数あります。
まとめ:初診日は「障害年金で最重要・最難関」のポイント
障害年金では、社労士の間で
「初診日に始まり、初診日に終わる」
と言われるほど、初診日が重要で、かつ難しい要素です。
初診病院からの証明書が取れない場合は、早めに専門家へ相談した方が良いケースもあります。
次回【第5回】は、「診断書の取得」について解説します。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。






