第6回|障害年金の診断書取得時の注意点
こんにちは。社会保険労務士の菅野です。
このシリーズでは、障害年金の手続きをご自身やご家族で行われる方が、障害年金手続きの全体像や手順、各作業においての注意点が分かるように、全12回で解説しています。
前回は「障害年金の診断書の取得」についてお話しましたが、今回【第6回】は引き続き診断書について、障害年金の診断書取得時の注意点を解説します。
今回は、実際に診断書を依頼していただき、診断書が完成して手元に届いた後のお話が中心になります。
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まず最も大切なこと:診断書は必ず開封して確認する
出来上がった診断書は、必ず確認をしてください。ここが一番大切です。
診断書は封をされて渡されることが多いため、
「開けてはいけない」と思い込んで、確認せずに提出してしまう方が非常に多いです。
しかし、診断書はあくまでご自身の病状や生活状況を示す書類であり、
障害年金の手続きは基本的にご自身が主体となって進めていくものです。
ご自身が医師にどのように判断されているのかも分からないまま、
「生活が大変なので障害年金を受けたい」と手続きをするというのは、実はかなり違和感があります。
ですので、診断書を受け取ったら必ず封を開けて、内容を確認するようにしましょう。
診断書は「提出した内容が事実」として審査されます
診断書を確認する際は、
- 誤りがないか
- 記載漏れがないか
- 自分が感じているより軽い内容になっていないか
を必ず確認してください。
診断書は、提出されてしまえば、たとえ内容が事実と異なっていても、その内容が事実として審査が進みます。
審査側はその方の状態を直接把握できませんし、
医師が作成した診断書である以上、それを疑って確認することもしません。
しかし、提出前であれば、記載内容の補正や確認の相談をすることは可能です。
記載漏れ・事実相違があれば、適切に修正をお願いしましょう。
記載漏れ・記載相違は珍しくありません(医師が悪いわけではありません)
記載漏れやちょっとした記載の違いは、実は珍しくありません。
ただし、これは先生が悪いということではありません。
障害年金の診断書は、一般的な診断書と比べて圧倒的に細かく、作成負担が大きい書類です。
先生方は本来業務である診療の合間や、業務終了後に診断書作成をされるため、
時間がかかるのも当然ですし、細かい抜けや相違が出てしまうこともあります。
そのため、診断書は「誤りがある可能性があるもの」と理解したうえで、丁寧に確認することが重要です。
「病状の重さ」そのものの相談は慎重に(信頼関係を壊さない)
診断書の内容について医師に相談する際は、
- 記載漏れ
- 事実と異なる記載
- 認識の違い(生活状況や症状の伝わり方)
といった「事実確認の範囲」で相談することが大切です。
一方で、医師が状態を十分把握しているうえで作成された診断書であれば、
それは医学的に判断された内容です。
医療機関は治療の場ですので、適切な範囲を超えて、
「単に重く書いてほしい」とお願いすることは避けるべきです。
そのような依頼は、医師との信頼関係を壊し、治療に影響する可能性があります。
診断書の相談は、あくまでも「実体に即した内容かどうか」の確認に留めましょう。
修正・追記が必要になりやすい項目(確認ポイント)
① 日付関係(漏れ・誤記が多い)
診断書には日付が入る箇所が非常に多く、漏れや誤記が起こりやすい部分です。
特に重要なのは、前回もお話した現症日です。
必要な日付になっているかを必ず確認してください。
また、傷病の発生年月日や初診日の欄もありますが、ここは医学的判断が関わるため、
ご自身が考えている内容と相違する場合もあります。必要に応じて医師と相談しましょう。
ただし、発生年月日や初診日の欄の中でも、
「診療録で確認」「本人申立」の選択と、その日付の欄は非常に重要です。
初診病院で受診状況等証明書が取得できている場合は神経質になる必要はありませんが、
初診病院で取得できず、診断書作成病院の記録に頼って初診日証明を行う場合は、
この欄の記載が初診日認定の命綱になることがあります。
具体的には、
- 本人申立になっていること
- その日付が5年以上前であること
が重要です。
実際には、カルテに5年以上前の記載があるにもかかわらず、
誤って本人申立の日付が直近になってしまうケースもあります。
該当する方は特に注意して確認しましょう。
② 検査数値(結果通知と照らし合わせる)
検査数値が記載される項目は、診断書とは別にご自身にも結果通知がある場合が多いと思います。
その数値が正しく転記されているか確認しましょう。
また、視力・聴力など、検査結果で等級判断が明確な障害の場合は、
認定基準と照らし合わせて事前に確認することをおすすめします。
検査数値で明確に等級非該当となる場合、手続きを行っても意味がないケースもあり得ます。
ご自身の傷病の基準を確認することが重要です。
③ 肢体の診断書(補助具を使用しない状態で評価する)
肢体の診断書では、日常生活動作の障害の程度について、
「補助用具を使用しない状態で判断してください」と明記されています。
しかし稀に、補助具を使用した状態の内容が記載されてしまうケースがあります。
補助具があれば当然できることが増えるため、診断書が軽くなり、
低い等級や不支給の原因になることがあります。
診断書を確認する際には、
「どのような検査を受けたか(補助具を付けていたか)」を思い出しながら、該当欄を確認しましょう。
④ 精神の診断書(確認ポイントが多い)
精神の診断書は作成件数も多く、注意点も多いため、代表的なポイントを紹介します。
・ICD-10コードの記載漏れ
精神の診断書には、ICD-10コードを記載する欄があります。
漏れている場合は追記をお願いしましょう。
・生活環境(同居者の有無)
同居家族がいるのに「同居者なし」に丸が入っている場合は必ず修正してください。
精神障害の審査では、同居者の有無は重要な要素です。
また、単身生活でやむを得ない事情がある場合には、
全般的状況欄に事情を書いてもらうことをおすすめします。
単身生活を行わざるを得ない事情は考慮されることになっています。
・就労状況(特に一般雇用は重要)
就労実体がある場合は、ありのまま記載してもらう必要があります。
特に重要なのが「職場での援助の状況」「意思疎通の状況」です。
ここが空欄だと、配慮なしで一般雇用ができていると捉えられ、
審査が厳しくなる可能性があります。
職場からの配慮・援助がある場合には、必ず記載してもらいましょう。
・福祉サービスの利用状況
福祉サービスの利用状況も審査で重要視されます。
実際に利用しているサービスがあるのに記載がない場合は追記を依頼しましょう。
提出前に必ず診断書のコピーを取る
診断書の内容確認が終わり、これで問題ないという状態になったら、
診断書は必ずコピーを取っておきましょう。
今後、
- 審査結果が不服で審査請求を行う場合
- 認定後に更新手続きが必要になる場合
などに、前回提出した診断書内容が分からないと適切な対応ができなくなります。
繰り返しになりますが、提出前に必ず診断書のコピーを取っておくようにしてください。
まとめ
今回は、診断書が完成して手元に届いてからの注意点として、
- 封を開けて必ず中身を確認する
- 記載漏れ・誤り・軽すぎる内容になっていないか確認する
- 医師への相談は事実確認の範囲で行う
- 日付・検査数値・肢体・精神の診断書は特に注意して確認する
- 提出前に必ずコピーを取る
というポイントを解説しました。
次回【第7回】は、多くの方が作成にご苦労される、病歴・就労状況等申立書について解説します。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。






