第7回|障害年金で「自分で書く」最重要書類【病歴就労状況等申立書】の書き方(表面)
こんにちは。社会保険労務士の菅野です。
このシリーズでは、障害年金の手続きをご自身やご家族で行われる方が、障害年金手続きの全体像や手順、各作業においての注意点が分かるように、全12回で解説しています。
前回は診断書の取得時の注意点について解説しましたが、第7回の今回は、作成にご苦労される方が非常に多い「病歴・就労状況等申立書」について解説します。
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障害年金で重要な3つの書類
障害年金の手続きでは多くの書類を提出しますが、その中でも特に重要な書類が3つあります。
- 受診状況等証明書
- 診断書
- 病歴・就労状況等申立書
受診状況等証明書と診断書は医師が作成する書類ですが、
病歴・就労状況等申立書はご自身で作成する書類です。
この点が、他の書類と大きく異なるポイントであり、多くの方が悩まれる理由でもあります。
病歴・就労状況等申立書は「自由記述」。だから難しい
病歴・就労状況等申立書は、枠があるものの中身は完全に自由記述です。
用紙の上部に書き方は簡単に記載されていますが、
- どのような内容を
- どのくらいの分量で
- どのようにまとめればよいのか
が非常に分かりづらく、記載ルールも緩いため、逆に悩んでしまう方がとても多い書類です。
病歴・就労状況等申立書の役割とは?なぜ重要なのか
それぞれの書類が担う役割を整理すると、以下のようになります。
- 受診状況等証明書:初診日を証明する書類
- 診断書:現症日(ある一時点)の障害状態を示す書類
- 病歴・就労状況等申立書:初診から現在までの経過を時系列でつなぎ、内容を補足する書類
診断書は現症日一点の状態を示すものです。
そこで、その点と点を線でつなぎ、障害状態の経過や生活状況・就労状況を補足する役割を担うのが申立書です。
つまり、申立書は、「診断書に書ききれない背景や経過を補う」という非常に重要な役割を持っています。
申立書は「重要ではない」と言われることもあるが…
「等級判断の9割は診断書だから、申立書はあまり重要ではない」と言われることもあります。
これは実際のところ、半分本当で、半分嘘です。つまりケースバイケースです。
申立書の重要性が低いケース(例:基準が明確な障害)
例えば、初診日が明確で、等級の基準が比較的明確な障害の場合です。
例として、人工関節の挿入は3級に該当するなど、認定基準が明確な場合は、申立書が簡潔でも認定されることがあります。
審査側が余計な検討をする必要がないためです。
申立書の重要性が高いケース(例:精神障害など)
一方で、精神障害など基準の明確性に劣る障害では、申立書の重要性が高まります。
精神障害の等級判断では、例えば以下のような要素が総合的に考慮されます。
- 前後の経過
- 周囲からの援助の状況
- 就労している場合の職場での配慮や援助の状況
- 福祉サービスの利用状況
診断書にも記載欄はありますが、欄のサイズには限界があります。
そのため、診断書を補足し、状況を具体的に伝えることができるのが申立書です。
ただし、申立書はあくまで補足資料ですので、申立書だけで診断書以上の重い認定になることはありません。
重要なのは、診断書の内容を適切に補うことです。
申立書が「足を引っ張る」ケースもある
申立書は重要な一方で、書き方によっては逆に不利に働くこともあります。
実際の相談事例として、精神障害の手続きで不支給になった方がいました。
診断書や受診状況等証明書には不支給の要素が見当たらなかったのですが、申立書の内容が診断書よりも遥かに軽く書かれていたケースです。
ご家族から話を聞くと明らかに生活への支障があるにも関わらず、ご本人には病識がなく、
「問題がない」ような申立書を作成してしまっていたため、審査側もその書類を前提に判断せざるを得なくなってしまいました。
また、苦労してたくさん書いている申立書でも、日記のようになってしまい、審査で見られる重要要素が書かれていないケースもあります。
これでは、どれだけ書いても審査上プラスになりません。
申立書は、「長く書くこと」ではなく、審査上必要な情報を、読みやすく端的にまとめることが重要です。
作成の前提:可能ならパソコンで作成する
環境的に可能であれば、申立書はできるだけパソコンで作成しましょう。
「手書きの方が気持ちが伝わる」と考える方もいますが、審査ではそのような評価はありません。
審査をする方は膨大な量の書類を処理しています。
短い時間で確実に伝えるためには、読みやすさが大前提です。
パソコンで作成すれば、
- 読みやすく整えられる
- 書き直しや修正がしやすい
- 要点を整理しやすい
というメリットがあります。
ただし、手書きでも提出は可能です。
手書きの場合は、できるだけ丁寧な字で、読みやすい文章を意識しましょう。
まずは枠を区切る:時系列を整理することが最初の作業
申立書は、いきなり文章を書き始めるのではなく、まず枠を区切って時系列を整理することが重要です。
区切り方に明確なルールはありませんが、基本的には以下の考え方がベースになります。
① 受診歴で区切る(基本ルール)
受診歴を洗い出し、
- 初診の病院
- 次の病院
- 受診していない期間(あれば)
- 現在の病院
という形で、医療機関ごと・受診の有無ごとに区切っていきます。
これは申立書の基本的な記載ルールに近い考え方です。
② 1期間は「5年以内」を目安に区切る
申立書は、一般的に5年以内を目安に区切ることになっています。
5年以上の期間がある場合は、
- 学歴
- 職歴
- 転機となるライフイベント
などを目安に期間を分割していきます。
それでも5年を超える場合は、年末年始や年度単位などで分割し、5年以内に収まるようにします。
ただし、5年以上になっていても審査で細かく指摘されることは実際には多くありません。
必要以上に縛られすぎず、区切りやすいところで区切るという考え方で十分です。
先にここまで期間を区分してしまえば、その期間ごとに記憶を辿ればよくなるため、作成がかなり楽になります。
※発達障害など先天性の傷病については、生まれた日から記載する必要がありますので注意してください。
枠の中に書く内容:何を書けばいいのか
申立書には、発病から現在に至るまでの経過と生活状況を、事実に基づいて時系列で記載します。
具体的には、以下のような内容です。
- 発病時の状況
- 初診までの経過
- 通院頻度や治療内容
- その時期の日常生活の状況
- その時期の仕事(就労)の状況
- 受診していない期間があれば、その理由と体調
- 病院を変更した理由(転院理由)
重要なのは、時系列に沿って、読み手(審査側)が理解しやすいように端的にまとめることです。
ただし、いきなりきれいに完成させようとすると大変です。
最初は思いつくことをどんどん書き出し、そこから要約して整理していくのが現実的です。
診断書を補足する意識が大切(特に就労している方)
申立書は、認定基準に基づいて診断書を補足する意識が大切です。
特に精神疾患や内科系の疾患で、就労している場合には、
- 職場での苦労
- 職場からの配慮の状況
- 勤怠状況(欠勤・遅刻・早退など)
をしっかり伝えましょう。
生活支援を受けている場合には、援助の内容を具体的に記載することも重要です。
まとめ:申立書は「時系列整理」と「審査に必要な情報の補足」が鍵
今回は、病歴・就労状況等申立書(表面)の位置づけと、作成の基本的な考え方について解説しました。
- 申立書は「初診から現在までの経過」をつなぐ補足資料
- 精神障害などでは特に重要性が高い
- 書き方次第では不利に働くこともある
- できればパソコンで作成し、読みやすく端的にまとめる
- まず受診歴で枠を区切り、時系列を整理する
- 生活状況・就労状況を事実に基づいて記載する
申立書の例については、枠の区切り方や記載内容の参考になりますので、必要に応じて確認してみてください。
次回【第8回】は、病歴・就労状況等申立書の裏面の書き方について解説します。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。






