初診日講座 第1回|初診日の基本的な考え方・今後の講座の全体像
こんにちは。社会保険労務士の菅野です。
少し前に、ご自身やご家族で障害年金の手続きを行うための連続講座を配信しました。実際に手続きを進めるタイミングの方々から「参考になった」とのお声もいただき、私としても大変安心しております。
そこで今回からは、よりテーマを絞って、障害年金の「初診日」に関する全12回の連続講座をスタートします。
初診日は、障害年金の手続きにおいて支給の可否や受給額に直結する最重要ポイントです。にもかかわらず、初診日の証明がうまくできず、手続きそのものが進まないというケースは決して少なくありません。
この講座では、初診日の基本的な考え方から、証明に困ったときの解決方法、さらに専門家でないと把握しづらい特殊な取り扱いまで、実務的に役立つ形で詳しく解説していきます。
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初診日とは?障害年金における定義
まず、障害年金における初診日は、次のように定義されています。
「障害の原因となった傷病について、初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日」
一般的に「初診日」と聞くと、「その病院で初めて受診した日」をイメージしがちですが、障害年金ではそうではありません。
障害年金でいう初診日とは、ご自身の傷病に関する一連の受診歴の中で、最も古い受診日を意味します。
つまり、転院が複数あっても、初診日は基本的に「その傷病につき1つ」です。
なぜ初診日が重要なのか
初診日が重要である理由は、障害年金の制度が初診日を基準にして成り立っているからです。
具体的には、初診日によって次の2つが決まります。
① 保険料納付要件の判断
障害年金には「保険料納付要件」があり、要件を満たしていなければ障害年金を受給できません。
この納付要件は、初診日を基準にして判定されます。
② 障害認定日の特定
障害年金では、原則として初診日から1年6ヶ月後が「障害認定日」とされます。
障害認定日がいつなのかによって、認定日請求が可能か、遡及請求ができるかなどが決まります。
このように、初診日が正しく特定できないと、受給要件の判定そのものができなくなるため、障害年金が受給できない可能性が出てきます。
なぜ初診日の証明が難しいのか
初診日が重要であるにもかかわらず、多くの方が初診日証明で苦戦する理由は、初診日を証明するための書類取得が難しいケースが多いためです。
基本的な初診日証明の方法は、初診日の医療機関に依頼して「受診状況等証明書」を作成してもらい、提出することです。
受診状況等証明書は、カルテ記録をもとに初診日や受診経過などを記載する書類です。
しかしここで問題になるのが、医療機関におけるカルテ保存義務です。
カルテの保存義務は「5年」
医療機関におけるカルテの保存義務は、法律上5年とされています。
つまり、5年を超えるとカルテを保存しておくか破棄するかは医療機関の判断となり、実際には初診日が古い方ほど、初診病院にカルテが残っていないということが珍しくありません。
また、病歴が長い方は複数の医療機関を受診していることも多く、さらに初診病院が小規模医療機関の場合は、閉院しているというケースもよくあります。
こうした「カルテ破棄」や「閉院」にあたってしまうと、初診病院から受診状況等証明書が取得できず、初診日証明が一気に難しくなります。
初診病院の証明が取れない=もう受給できない、ではありません
初診病院から受診状況等証明書が取得できないと、「もう障害年金は無理なのでは」と不安になる方も多いと思います。
しかし、結論としては、そんなことはありません。
審査側も「落とすために審査をしている」わけではなく、客観的に見て合理的に初診日を推定できる資料が整えば、初診日が認められる可能性があります。
このあたりは、専門家でないとなかなか知らないような複雑な取り扱いもありますが、実務的には「何とか解決できる」ケースも少なくありません。
そのため、この連続講座では、初診日の証明に関する様々な方法を具体例や通達に基づいて、順番に解説していきます。
今後の講座の概要(全12回)
初診日は一見シンプルな概念ですが、実務上は様々な特殊な取り扱いがあり、誤解やつまずきが起こりやすい分野です。
この講座では、初診日に関して、
- 初診日証明の基本的な進め方
- 受診状況等証明書が取れない場合の考え方
- 2番目以降の医療機関の記録を使った証明
- 第三者証明・健康診断等を使った証明
- 相当因果関係や特殊な初診日の取り扱い
- 実務上の注意点(医療機関への依頼の仕方など)
など、初診日証明を行ううえで必要となるポイントを段階的に整理してお伝えしていきます。
初診日の証明がうまくできず、障害年金の手続きが進んでいない方を一人でも救えれば、大変嬉しいです。
初診日に課題がある場合は、早めに専門家へ相談も検討を
この講座は、ご自身で手続きを進められるように作成していますが、初診日に課題がある場合は、手続きの難易度が一気に上がります。
初診日は、障害年金の権利そのものに大きく影響するため、専門家の支援を受けた方がスムーズに受給につながるケースも多いです。
もうどうしたらいいかわからない、という場合は、早めに障害年金に詳しい社労士へ相談することも選択肢として検討してみてください。
次回予告
次回【第2回】では、「初診日証明の進め方」について詳しく解説します。
初診日証明の作業は、最初にどのような順番で確認・準備をしていくかがとても重要です。
ぜひ次回も参考にしていただければと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。






