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障害年金の初診日証明|健診結果を初診日証明に活かす条件と注意点

初診日講座 第6回|健康診断における初診日の取り扱い

こんにちは。社会保険労務士の菅野です。

障害年金における「初診日」は、受給できるかどうかを大きく左右する非常に重要なポイントです。
この連続講座では、初診日についての様々な取り扱いや証明の方法を、全12回にわたって詳しく解説しています。

前回【第5回】では、「診察券などを活用した初診日証明」について、診察券や領収書・レセプトなどの資料をどのように活用できるのかを解説しました。
まだご覧になっていない方は、ぜひそちらもご確認ください。

さて第6回となる今回は、「健康診断における初診日の取り扱い」について詳しくお話していきます。

医療機関の記録が失われていたり、廃院でそもそも証明書類が取得できなかったりすると、初診日の証明はそれだけで難易度が一気に上がります。
そのような状況で、選択肢の一つとして出てくるのが健康診断の結果です。

健康診断には独特な取り扱いがありますが、正しく理解しておくことで、初診日の証明が「なんとかなる」ケースもわずかながら存在します。
ただし、こうした判断は複数資料の組み合わせや通達上の取り扱いを踏まえて客観的に行う必要があるため、迷う場合は専門家への相談もおすすめします。


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結論:健康診断を受けた日(健診日)は、原則として初診日になりません

「健康診断の結果で異常が見つかった」「そこで病気がわかった」

このような場合、

「健診日が初診日になるのでは?」

と思われる方も少なくありません。

しかし、結論からお伝えすると、健康診断を受けた日(健診日)は、原則として障害年金における初診日にはなりません。

その理由は、障害年金の制度上、初診日が

「治療目的で初めて医療機関を受診した日」

とされているためです。

健康診断は、治療を目的とした受診ではなく、あくまで検査・スクリーニングですので、原則として初診日とは取り扱われません。

この点は通達上にも明記されていますので、健診日を初診日として主張しても、原則的には認められないことになります。


ただし例外あり:健診日が初診日として認められる可能性があるケース

では、健診日は絶対に使えないのかというと、そういうわけではありません。

実は例外的に、健診日が初診日として認められる可能性がある取り扱いが、通達やQ&Aに記載されています。

健診日が初診日として扱われる可能性があるのは、次の3つの条件がそろう場合です。

  1. 医療機関での証明書類が得られず、初めて治療目的で受診した日を証明できない
  2. 健診結果が医学的見地からみて「ただちに治療が必要」と判断できる内容である
  3. 本人から「健診日を初診日としてほしい」という申立てがあり、健診結果を資料として添付している

この3つの条件がそろった場合に限り、例外的に健診日を初診日として認めることができる可能性があります。


どのような健診結果が「ただちに治療が必要」とされるのか

では、「ただちに治療が必要」と判断できる健診結果とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

実際に日本年金機構のQ&Aに掲載されている例としては、次のようなものがあります。

  • 請求傷病:完全房室ブロック
    健診結果:「高度房室ブロック:疑」
  • 請求傷病:慢性腎不全(糖尿病性腎症)
    健診結果:「尿蛋白2プラス(++)、尿たんぱく多量のため、一度腎機能検査が必要」

このように、健診結果の内容が医師が見れば

「これはすぐに医療介入が必要」

と判断できるような異常所見であることが求められます。

ここから読み取れる重要な視点は、

医学的にみて重症度が高い、あるいは救急性が高いと認められること

が必要だということです。

したがって、

  • 血圧がやや高い
  • 数値が少し基準を超えている
  • 経過観察

といったレベルの指摘では、健診日を初診日として認めてもらえる可能性は低いと考えておくべきです。


初診日証明に困っている方は「健診結果が残っていないか」を確認してみる

初診日の証明に困っている方の中には、

  • 初診病院が閉院している
  • カルテが破棄されている
  • 受診状況等証明書が取得できない

という事情で、初診日がどうにもならないと思い込んでしまっている方もいらっしゃいます。

もちろん、健康診断で初診日が認められるケースは多くはありません。
ただし、条件に該当する場合は、健診結果が手元にあるだけで初診日証明が成立することもあり得ます。

可能性の一つとして、健診結果が残っていないか、まずは確認してみることをおすすめします。


健康診断結果は「初診日」以外の場面でも活用できる

今回は「初診日にできるかどうか」という観点で健康診断の取り扱いをご紹介しましたが、
健康診断結果は、実務上それ以外の使い方をすることもあります。

例えば、

  • 社会的治癒の参考資料として使う
  • 「この時期には発症していなかった(社会生活に支障がなかった)」ことの証明として使う

といった活用方法です。

初診日証明は、通達の理解に加え、状況をいろいろな角度から見直すことで解決できるケースもあります。
ひらめきや発想が大切になることも多い分野ですので、健康診断結果も「使える可能性がある資料」として覚えておいてください。


まとめ|健康診断における初診日の取り扱い

  • 健診日は原則として初診日にならない
  • 例外的に、「ただちに治療が必要」と判断できる健診結果で、本来の初診日が証明できない場合に限り、健診日が初診日として扱われる可能性がある
  • その際は、本人の申立て健診結果の添付が必須

今回のような初診日に関わる判断は非常に複雑で、資料の読み取りや通達の理解も必要になります。
初診日が認められなければ、障害年金の権利そのものが得られなくなるケースもあります。

制度上の取り扱いが活用できそうかどうか迷う場合には、自己判断で進めず、専門家へ相談することも検討してみてください。


次回予告

次回【第7回】では、「初診日が日付まで特定できない場合の取り扱い」について解説します。

初診日が「○年○月頃」などアバウトにしか分からないケースは非常に多くあります。
日付が特定できない場合でも認められるための考え方を整理してお伝えしますので、ぜひ次回もご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

2026年01月08日 10:00
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