内科系疾患|呼吸器疾患
呼吸器疾患の認定基準
肺結核・じん肺・呼吸不全の区分別に解説
COPD・間質性肺炎・肺結核・じん肺・気管支喘息などで呼吸機能が低下した方は、障害年金の対象になる可能性があります。呼吸器疾患は「肺結核」「じん肺」「呼吸不全」の3区分で認定され、動脈血ガス分析値(A表)・予測肺活量1秒率(B表)・一般状態区分などの基準が定められています。このページでは、公式の認定基準を区分ごとに整理し、申請のポイントを障害年金を専門に扱う社会保険労務士が解説します。
障害年金の等級と制度の基本
呼吸器疾患による障害は、自覚症状・他覚所見・検査成績(胸部X線所見、動脈血ガス分析値等)・一般状態・治療及び病状の経過・年齢・合併症・具体的な日常生活状況などにより総合的に認定されます。その際、認定の時期以後、少なくとも1年以上の療養を必要とするものであることが前提です。
認定基準では、呼吸器疾患を「A 肺結核」「B じん肺」「C 呼吸不全」の3つに区分しています。認定の対象はそのほとんどが慢性呼吸不全によるもので、特別な取扱いを要する疾患として肺結核・じん肺・気管支喘息があげられます。以下、区分ごとに基準を解説します。
呼吸器疾患の等級(共通の考え方)
| 1級 |
長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
| 2級 |
日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
| 3級 |
労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの(障害厚生年金のみ) |
◆A|肺結核
肺結核による障害は、病状判定と機能判定により認定します。病状判定は、胸部X線所見(日本結核病学会病型分類=「学会分類」の型と病巣の拡がり)・排菌状態・一般状態・経過などから総合的に行います。機能判定は、後述の「C 呼吸不全」の基準によって認定します。
肺結核の等級(病状判定による例示)
| 1級 |
認定の時期前6月以内に常時排菌があり、胸部X線所見が学会分類のⅠ型(広汎空洞型)又はⅡ型(非広汎空洞型)、Ⅲ型(不安定非空洞型)で病巣の拡がりが3(大)であるもので、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの |
| 2級 |
①認定の時期前6月以内に排菌がなく、学会分類のⅠ型・Ⅱ型又はⅢ型で病巣の拡がりが3(大)であり、日常生活が著しい制限を受けるもの
②認定の時期前6月以内に排菌があり、学会分類のⅢ型で病巣の拡がりが1(小)又は2(中)であり、日常生活が著しい制限を受けるもの |
| 3級 |
①認定の時期前6月以内に排菌がなく、学会分類のⅠ型・Ⅱ型又はⅢ型で、積極的な抗結核薬による化学療法を施行しており、労働が制限を受けるもの
②認定の時期前6月以内に排菌があり、学会分類Ⅳ型であり、労働が制限を受けるもの(障害厚生年金のみ) |
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機能面の障害は「呼吸不全」の基準で判定します。肺結核および肺結核後遺症で呼吸機能が低下している場合の障害の程度は、下記「C 呼吸不全」の認定要領によって判定されます。なお「抗結核剤による化学療法を施行しているもの」とは、少なくとも2剤以上の抗結核剤により積極的な化学療法を施行しているものをいいます。また、加療による胸郭変形に肩関節の運動障害を伴う場合は、肢体(上肢)の障害として併合認定の対象になります。
◆B|じん肺
じん肺(粉じん作業による肺の疾患)による障害も、病状判定と機能判定により認定します。病状判定は、胸部X線所見(じん肺法の分類の型)・呼吸不全の程度・合併症などから総合的に行い、機能判定は「C 呼吸不全」の基準によります。
じん肺の等級(病状判定による例示)
| 1級 |
胸部X線所見がじん肺法の分類の第4型であり、大陰影の大きさが1側の肺野の1/3以上のもので、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの |
| 2級 |
胸部X線所見がじん肺法の分類の第4型であり、大陰影の大きさが1側の肺野の1/3以上のもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるもの |
| 3級 |
胸部X線所見がじん肺法の分類の第3型のもので、かつ、労働が制限を受けるもの(障害厚生年金のみ) |
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じん肺の初診日には注意が必要です。じん肺は、粉じん作業をやめてから発症・進行することがあり、初診日の考え方に特有の論点があります。職歴(どの期間、どの粉じん作業に従事したか)とあわせて整理が必要です。機能面の障害は「C 呼吸不全」の基準で判定します。
◆C|呼吸不全
呼吸不全とは、原因のいかんを問わず、動脈血ガス分析値(特に動脈血O₂分圧と動脈血CO₂分圧)が異常となり、そのために生体が正常な機能を営み得なくなった状態をいいます。認定の対象となるのは主に慢性呼吸不全です。原因は、閉塞性換気障害(肺気腫、気管支喘息、慢性気管支炎等)・拘束性換気障害(間質性肺炎、肺結核後遺症、じん肺等)・心血管系異常・神経筋疾患など多岐にわたり、肺疾患のみが対象ではありません。
検査成績の目安(A表・B表)
障害の程度の参考として、動脈血ガス分析値(A表)と予測肺活量1秒率(B表)の異常の程度が示されています。動脈血ガス分析値の測定は安静時に行い、病状判定に際しては動脈血O₂分圧値を重視します。
A表 動脈血ガス分析値
| 区分 |
検査項目 |
単位 |
軽度異常 |
中等度異常 |
高度異常 |
| 1 |
動脈血O₂分圧 |
Torr |
70〜61 |
60〜56 |
55以下 |
| 2 |
動脈血CO₂分圧 |
Torr |
46〜50 |
51〜59 |
60以上 |
(注)病状判定に際しては、動脈血O₂分圧値を重視する。測定は安静時に行う。
B表 予測肺活量1秒率
| 検査項目 |
単位 |
軽度異常 |
中等度異常 |
高度異常 |
| 予測肺活量1秒率 |
% |
40〜31 |
30〜21 |
20以下 |
一般状態区分表
一般状態区分表
| 区分 |
一般状態 |
| ア |
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの |
| イ |
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの(例:軽い家事、事務など) |
| ウ |
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
| エ |
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
| オ |
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
呼吸不全の等級(検査成績×一般状態区分)
呼吸不全の等級(例示)
| 1級 |
A表及びB表の検査成績が高度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表の「オ」に該当するもの |
| 2級 |
A表及びB表の検査成績が中等度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表の「エ」又は「ウ」に該当するもの |
| 3級 |
A表及びB表の検査成績が軽度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表の「ウ」又は「イ」に該当するもの(障害厚生年金のみ) |
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数値だけで決まるわけではありません。呼吸不全の障害の程度の判定はA表の動脈血ガス分析値を優先しますが、その他の検査成績も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して総合的に認定されます。慢性肺疾患では個人の順応・代償という現象があり、検査成績が必ずしも障害の程度を示すとは限らないためです。
慢性気管支喘息の場合
慢性気管支喘息は、症状が安定している時期の症状の程度・使用する薬剤・酸素療法の有無・検査所見・日常生活状況を総合して認定します(肺機能や血液ガスだけでは重症度を弁別しにくいため、治療内容を含めて判定)。大まかには、最大限の薬物療法でも大発作が続き在宅酸素療法が常に必要なもの=1級、呼吸困難を常に認め酸素療法を要し一定のステロイド連用が必要なもの=2級、喘鳴・呼吸困難を週1回以上認め一定の吸入ステロイド等の連用を要するもの=3級、が目安として例示されています。なお「喘息+肺気腫(COPD)」「喘息+肺線維症」は呼吸不全の基準で認定します。
在宅酸素療法を行っている場合
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常時(24時間)の在宅酸素療法は原則3級です。常時(24時間)の在宅酸素療法を施行中で、軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のものは3級に認定されます。臨床症状・検査成績・日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定されます。また、障害の程度を認定する時期は在宅酸素療法を開始した日(初診日から1年6月を超える場合を除く)とされ、1年6月を待たずに申請できる特例があります。
このほか、慢性肺疾患により非代償性の肺性心を生じているものは3級(経過等によりさらに上位等級)、原発性肺高血圧症や慢性肺血栓塞栓症等の肺血管疾患はA表と日常生活状況等により総合的に認定、とされています。
認定の方法・申請のポイント
どの区分で申請するかを見極める
ご自身の疾患が肺結核・じん肺・呼吸不全のどれに当たるか、また病状判定と機能判定のどちらで有利になるかを見極めることが重要です。COPD・間質性肺炎・肺線維症などは「C 呼吸不全」で、動脈血ガス分析値(特にO₂分圧)と一般状態区分の組み合わせで判定されます。
在宅酸素療法は早めの手続きを
常時の在宅酸素療法を始めた場合は、開始日が認定日になる特例があります。初診日から1年6月を待たずに申請できるため、開始後は早めに手続きを検討しましょう。
診断書のポイント
呼吸器疾患は「呼吸器疾患の障害用の診断書」を使用します。
動脈血ガス分析値(O₂分圧・CO₂分圧)と予測肺活量1秒率が記載されているか(安静時測定)。
在宅酸素療法の有無と使用状況(常時24時間か/開始日)が記載されているか。
一般状態区分(ア〜オ)が実際の状態と合っているか。
肺結核・じん肺の場合、胸部X線所見(学会分類・じん肺法分類の型、病巣の拡がり・大陰影)と排菌状態が記載されているか。
日常生活での息切れ・呼吸困難の程度(どの動作で苦しくなるか)が具体的に反映されているか。
よくあるご質問
Q在宅酸素療法をしています。対象になりますか?
A常時(24時間)の在宅酸素療法を施行中で、軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のものは原則3級に認定されます。臨床症状・検査成績・日常生活状況によってはさらに上位等級になります。認定日は在宅酸素療法を開始した日となる特例があります。
QCOPD(肺気腫)です。どの基準で判定されますか?
ACOPDは「呼吸不全」の区分で判定されます。安静時の動脈血ガス分析値(特にO₂分圧)と予測肺活量1秒率、一般状態区分(ア〜オ)の組み合わせで等級が認定されます。
Q検査数値は境界的ですが、少し動くと息苦しくなります。
A呼吸不全の判定はA表の動脈血ガス分析値を優先しますが、数値だけでなく日常生活状況等を含めて総合的に認定されます。どの動作で息切れするかなど、生活の支障を具体的に伝えることが重要です。
Qじん肺と診断されました。仕事はもう辞めています。
Aじん肺は粉じん作業をやめてから進行することがあり、初診日の考え方に特有の論点があります。職歴とあわせて整理する必要があるため、専門家への相談をおすすめします。
Q喘息がひどいのですが対象になりますか?
A慢性気管支喘息は、症状が安定している時期の症状・使用薬剤・酸素療法の有無・検査所見・日常生活状況を総合して認定されます。最大限の治療を行ってもなお症状が残る場合が対象で、治療内容を含めて判定されます。
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出典:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第10節 呼吸器疾患による障害。本ページは公式基準の全文にもとづく解説です。実際の等級は診断書等をもとに日本年金機構の審査により判定されます。