うつ病
障害の状態
- 抑うつ気分・意欲低下により、着替えや入浴も家族の声かけがないと行えないことが多い
- 食事は1日2食以下で偏食が続き、副作用等により体重が健康時より約20kg増加
- 発病後は人との関わりを避けるようになり、限られた数人以外との交流がほとんどない
- 月1回の通院にも一人では行けず、母親の付き添いが必要
- 自傷行為や希死念慮を伴うことがあり、精神状態が不安定
相談までの経緯
ご相談者様は、幼少期に大きな問題なく育ち、小学校低学年の頃にご両親が離婚されたことをきっかけに転校されましたが、転校先でも剣道に打ち込み全国大会に出場するなど、学業・対人面ともに大きな困難のない学生生活を送っていました。中学校では吹奏楽部で県大会に出場し、高校では情報処理学科で複数の資格を取得するなど良好な成績を収めていましたが、家庭の経済的な事情から専門学校への進学を断念し、高校卒業後は就職する道を選ばれました。
卒業後は食品会社に新卒で入社したものの、長時間労働で残業代や通勤手当も支給されない環境のため、やむなく退職代行を利用して退職。その後はドラッグストアやアパレル関連の仕事を経て、総務一般事務の仕事に就かれましたが、長時間勤務や交際相手のご家族との関係によるストレスが重なり、平成30年10月頃から動悸や過呼吸、手の震えなどの症状が現れるようになりました。仕事中に突然泣き出してしまうことが続いたため心療内科の受診を勧められ、令和元年5月、医療機関を受診されたのが今回の傷病の初診となります。
その後は休職と復職を繰り返す中で症状が悪化し、自傷行為や希死念慮も見られるようになり、令和2年2月末での退職、同年10月には任意入院に至りました。退院後は家族の支えを受けながら生活する中で、ご本人様は「自分で手続きを進めるのは難しいかもしれない」「年金事務所へ相談に行くこと自体が負担に感じる」と感じておられ、過去には障害者手帳の申請が通らなかった経験もあったことから、専門家に依頼したいというお気持ちで、当事務所のホームページの相談フォームからお問い合わせをいただきました。
対 応
初回のヒアリングでは、初診日から現在までの受診・転院の経過、これまでの就労状況、日常生活での困りごとについて、ご本人様およびご家族様から時間をかけてお伺いしました。診断書の内容を確認したところ、うつ病による症状に加えて、知能検査により軽度の知的障害の所見(IQ62)が記載されていることが分かり、この点をどう整理するかが今回の申請における大きな争点となりました。
知的障害が原因でうつ病の症状が生じたと判断されると、初診日の考え方や請求できる年金の種類が変わってしまう可能性があります。そこで生育歴を改めて確認したところ、小学校時代の剣道全国大会出場や、高校時代の複数の資格取得など、幼少期から学齢期にかけて知的な発達の遅れを示すような事実は見当たらないことが分かりました。この経過を踏まえ、うつ病と知的障害は因果関係のない別の傷病であると整理し、初診日はうつ病発症後に受診した令和元年5月13日とする方針で、申立書・診断書の作成を進めることといたしました。
障害認定日(令和2年11月13日)頃の状態を証明する診断書と、現在の状態を証明する診断書をそれぞれ主治医に作成いただき、生育歴の裏付け資料として高校時代の成績通知表なども申立書に添付したうえで、令和5年4月28日に請求書を提出しました。審査は約2か月半で終了し、同年7月に障害厚生年金2級(障害基礎年金2級)の決定をいただき、認定日までさかのぼっての遡及受給となりました。診断書に複数の障害の所見が併記される場合の初診日整理の重要性を、改めて実感した事例です。
うつ病に関するポイント
日常生活能力の判定が等級のポイントになる
うつ病による障害年金は、症状そのものだけでなく、食事・清潔保持・金銭管理・通院と服薬・対人関係など、日常生活の各場面でどの程度援助が必要かという「日常生活能力の判定」が等級判断の重要な要素とされています。今回のケースでも、着替えや入浴、通院に家族の付き添いが必要な状態であったことが、2級の認定につながる大きな要素となりました。
診断書に複数の障害の所見が併記される場合の初診日整理
精神疾患の診断書には、主傷病以外に知的障害や発達障害等の所見が併記されることがあります。両者に因果関係が認められると、初診日の考え方が変わる可能性があるため、生育歴を丁寧に確認し、因果関係の有無を整理することが重要とされています。今回は、成育歴や学業成績などの資料をもとに、うつ病と知的障害が別の傷病であることを整理したうえで請求を行いました。
認定日請求による遡及受給
障害認定日(初診日から1年6か月を経過した日等)の時点で障害の状態に該当していたことが診断書等で確認できれば、請求が認定日から時間が経過していても、認定日にさかのぼって年金を受給できる「認定日請求」が可能とされています。今回のケースでも、認定日頃の状態を証明する診断書を作成いただいたことで、認定日までさかのぼった遡及受給につながりました。
関連動画
今回のケースは、障害認定日にさかのぼって請求し、実際に遡及受給につながった事例です。認定日請求・遡及請求の考え方についてより詳しく知りたい方は、こちらの動画もあわせてご覧ください。
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