自閉症スペクトラム障害(ASD)・ADHD・うつ病
障害の状態
- 対人コミュニケーションに著しい困難があり、初対面の人に自分から話しかけられない
- 音・光・匂いへの感覚過敏が強く、暗い自室でないと落ち着いて過ごせない
- 身辺の清潔保持が困難で、入浴は週2〜3回程度、歯磨きができない時期もある
- 希死念慮が慢性的にあり、自殺企図を複数回繰り返している
- WAIS-Ⅲ全検査IQ76(言語理解93・知覚統合72・作動記憶76・処理速度81)
相談までの経緯
ご相談者様は、幼少期から一人でいることを好み、周囲の子どもたちとうまく馴染めず、いじめを受けることもありました。小学校では友人関係自体は保たれていたものの、忘れ物や不注意な行動が目立ち、算数だけが極端に苦手という特性がすでに表れていました。
中学校に進学すると対人トラブルが目立つようになり、中学2年生の初登校日から不登校となりました。個室での面談や母親の送迎でなんとか通学を続け、卒業式にも出席できないまま、校長室で一人卒業証書を受け取るという形で中学校生活を終えました。同級生の多くが進学する高校には通えず、通信制高校に進学しましたが、そこでも対人関係を築くことができず、公共交通機関での通学も難しく、母親の送迎に頼る日々が続きました。数学が全く分からない、アルバイトの面接で出された計算問題が解けないなど、学業・就労の両面で困難が重なる中、高校在学中に強い抑うつ症状から自殺を試みたことをきっかけに、学校を通じて発達支援課の支援につながり、知能検査等を経て令和元年9月、医療機関を初めて受診し、発達障害およびうつ病の診断を受けました(初診日)。
通信制高校を5年かけて卒業した後、一般就労は困難と判断され、令和2年10月から就労継続支援B型事業所への通所を開始しました。診察の場では自分の状況をうまく話せず、母親に代わりに話してもらうことも多く、通院の負担や母親への申し訳なさ、金銭的な不安が重なり、令和3年12月を最後に通院を中断してしまいます。その後も自宅では父親からの厳しい言動が続き、精神的に不安定な状態が続く中、令和5年3月には再び自殺を図る事態に至りました。今後の生活を続けていくためにも治療の再開が必要と考え、再び同じ医療機関の受診を予約されたタイミングで、当事務所へのご相談・ご依頼に至りました。
対 応
ご相談者様はご自身の状況を言葉にすることが苦手なため、初回のヒアリングでは、ご本人様とお母様の双方から、発症の経緯や現在の生活状況について詳しくお話を伺いました。特に、感覚過敏や対人コミュニケーションの困難、希死念慮や自殺企図の経過など、診断書だけでは伝わりにくい生活上の支障を書面にまとめ、診断書作成医療機関へ情報提供を行いました。
今回のケースでは、初診日が19歳時点(20歳の誕生日を迎える前)であったため、20歳前傷病による障害基礎年金として、保険料納付要件を問わずに請求できる案件でした。障害認定日は初診日から1年6か月を経過した令和3年3月18日にあたるため、認定日時点の症状を証明する診断書と現在の診断書の2通を医療機関に依頼し、認定日にさかのぼって請求する方針といたしました。また、診断書を作成いただいた医療機関が初診時と同一であったため、受診状況等証明書の追加取得は不要と判断しました。
病歴・就労状況等申立書の作成にあたっては、幼少期からの生育歴、学齢期の対人関係の困難、就労継続支援B型事業所での様子、家庭内での状況などを、ご本人様・ご家族様からお伺いした内容に沿って時系列で丁寧にまとめました。
令和5年4月に年金請求書を提出し、約2ヶ月半の審査期間を経て令和5年6月に決定。障害基礎年金2級が認定され、認定日にさかのぼって約169万円の遡及分を含めた受給につながりました。発達障害の特性による生活上の困難は診断書の記載だけでは伝わりにくい部分も多く、ヒアリングを重ねて生活実態を具体的に補足することの重要性を改めて感じた事例です。
自閉症スペクトラム障害に関するポイント
20歳前傷病による障害基礎年金
初診日が20歳の誕生日を迎える前にある場合、保険料納付要件は問われず、20歳到達日または初診日から1年6か月を経過した日のいずれか遅い方が障害認定日となります。今回のケースでも、初診日が19歳時点であったため保険料納付要件は問題とならず、初診日から1年6か月を経過した日を障害認定日として、認定日にさかのぼる請求を行いました。
発達障害の認定における生活状況の具体的な記載の重要性
自閉症スペクトラム障害などの発達障害は、対人関係の困難さや感覚過敏、日常生活動作の支障の程度が、検査数値だけでは十分に伝わらないことがあります。診断書の記載を補うために、日常生活上の具体的なエピソードを整理してご本人様・ご家族様からお伺いし、医療機関へ情報提供することが、実態に即した認定を受けるうえで重要になります。今回のケースでも、対人関係・清潔保持・危機対応等に関する具体的な生活状況を書面にまとめてお伝えしたことが、認定の一助になったと考えています。
関連動画
認定日にさかのぼって請求する「遡及請求」は条件の理解が重要です。今回のケースのように認定日請求(遡及)を検討されている方は、こちらの動画もあわせてご覧ください。
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