自閉症スペクトラム障害・てんかん
障害の状態
- 対人コミュニケーションが苦手で、状況把握や相手の気持ちの理解が困難
- 知能検査でIQ50、軽度〜中等度の知的障害を認める
- 抗てんかん薬服用中も大きな発作が年1〜2回あり、心因性の偽発作も混在
- 清潔保持・金銭管理・調理など家事全般を自分では行えず家族が全面支援
- 通院は4週に1回、デイケア通所と訪問看護は週1回が限界の状態
相談までの経緯
ご本人様は幼少期から人見知りが激しく、公園など人の多い場所を苦手とし、同じ遊びを繰り返す傾向がありました。幼稚園の頃にはチック症を疑われたこともありました。小学3年生の頃から言葉がうまく出てこない、過呼吸のような症状が増えたことをきっかけに医療機関を受診し、てんかんの診断を受けました。小学4年生の時には、これに加えて軽度知的障害・学習障害の診断も受けています。
学校生活では、小学校高学年からいじめを受けるようになり、体調不良を「仮病」と誤解されることもありました。中学校では通常学級と特別支援学級を科目によって行き来しながら通学する一方、得意だった将棋では全国大会に出場するなど活躍する場面もありました。高校は将棋の実績が評価されて推薦で進学し寮生活を送りましたが、高校2年生頃から心無い言動によるいじめを受け、精神的に不安定になっていきました。
高校卒業後は専門学校へ進学しましたが、入学から1年が経とうとする頃、校内でのトラブルをきっかけにてんかん発作を起こして緊急搬送・入院し、そのまま退学となりました。この出来事を境に情緒不安定な状態が強まり、自傷行為に至って入院した病院で自閉症スペクトラム障害の診断を受けました。その後も転院を重ねながら療養を続け、現在は医療機関への通院と訪問看護、週1回程度のデイケア通所を利用しながら、日常生活の多くをご家族に頼って過ごしています。
専門学校を中退して以降、就労した経験は一度もありません。ご家族はかねてより障害年金の申請を検討していましたが、ご自身で手続きを進めるには時間的な制約や知識面での不安があり、インターネットで相談先を探す中で当事務所のホームページにたどり着き、ご相談をいただきました。
対 応
ご相談を受け、初回のヒアリングでは、発病から現在までの治療歴や日常生活の状況について、ご本人様とご家族様から丁寧に伺いました。今回のケースでは、自閉症スペクトラム障害・軽度知的障害とてんかんという複数の傷病があり、それぞれで初診日の考え方が異なる点が大きな争点となりました。てんかんについては小学生の時に受診した医療機関から受診状況等証明書を取得して整理を進める一方、知的障害・発達障害の特性は出生時から存在すると考えられるため、初診日を生まれた日とする20歳前傷病として請求する方針としました。この結果、障害認定日は20歳に達した日の前日となります。
診断書の作成にあたっては、障害認定日頃に近い時期に通院していた医療機関へ認定日時点の診断書を、現在通院中の医療機関へ現症の診断書をそれぞれ依頼しました。あわせて、日常生活の状況について具体的なヒアリングシートを作成し、医療機関へ情報提供を行うことで、実際の生活実態が診断書に反映されるよう努めました。病歴・就労状況等申立書についても、傷病ごとに分けて作成したうえで、ご本人様・ご家族様への確認を複数回重ね、記載内容の精度を高めました。
必要書類が整った後、令和5年11月に年金請求書一式を提出し、約2か月半の審査期間を経て、障害基礎年金2級の認定を受けることができました。障害認定日にさかのぼる形での認定となったため、遡及分の年金も受給する結果となりました。複数の傷病が絡む複雑なケースでしたが、初診日の考え方を丁寧に整理したことが、認定に結びついた事例です。
自閉症スペクトラム障害・てんかんに関するポイント
知的障害・発達障害の初診日の考え方
知的障害(精神発達遅滞)は、知的機能の障害がおおむね18歳までに現れることが多いとされ、初診日は原則として生まれた日とされています。自閉症スペクトラム障害などの発達障害についても、この考え方に基づいて整理されることがあります。今回のケースでも、知的障害・発達障害を中心に据え、初診日を生まれた日として20歳前障害基礎年金の請求を行いました。
てんかんの認定における発作の状況
てんかんの障害認定では、発作の型や頻度、日常生活への支障の程度が重要な判断材料となります。特に、抗てんかん薬による治療を継続していても発作が完全には抑制されない場合や、心因性の発作(偽発作)を合併している場合には、その状況を診断書に具体的に反映してもらうことが重要とされています。今回も、発作の頻度や心因性発作の存在について、医療機関への情報提供を通じて丁寧に整理しました。
複数傷病が併存する場合の初診日整理
発達障害・知的障害とてんかんのように複数の傷病が併存する場合、どちらを軸として初診日を整理するかによって、請求方法や必要書類の内容が大きく変わります。今回のケースでは、それぞれの傷病について受診状況等証明書や申立書を個別に準備しながら、最終的な請求方針を専門的に検討しました。
関連動画
今回のように障害認定日にさかのぼって請求し、遡及分の年金を受給するケースでは、遡及請求特有の注意点を理解しておくことが大切です。より詳しく知りたい方は、こちらの動画もあわせてご覧ください。
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