糖尿病網膜症・虚血性心疾患(陳旧性心筋梗塞ほか)
障害の状態
- 両眼糖尿病網膜症により視力は右0.04(矯正0.06)、左0.06(矯正不能)まで低下
- 循環器疾患は心機能分類NYHA Ⅲ、一般状態区分表「ウ」に該当
- 冠動脈ステント留置術など心臓カテーテル治療を計2回実施
- Ⅱ度房室ブロック(不整脈)により徐脈・息切れ・立ちくらみが生じる
- 視力低下により着替えや歩行など日常生活の多くの場面で家族の介助が必要
相談までの経緯
ご相談者様は、昭和53年に地元の会社へ就職し、以来長く同じ職場に勤務されていました。平成8年、勤務先の健康診断で高血糖と尿糖を指摘されたことをきっかけに医療機関を受診したところⅠ型糖尿病と診断され、以後インスリン注射や食事制限による治療が続きました。同じ時期に眼のかすみを感じて眼科も受診し、糖尿病網膜症も指摘されていましたが、当初は自覚症状が乏しく経過観察にとどまっていました。
その後、月1回の通院と食事療法・インスリン治療を続けながら勤務を継続されていましたが、平成14年に勤務先が倒産し無職となりました。職業訓練を経て平成15年から新たにパート勤務を始められたものの、糖尿病の症状は徐々に進行し、平成16年には低血糖性昏睡による入院も経験しています。平成20年頃からは視力の低下も急激に進み、両眼の網膜光凝固術やレーザー治療を繰り返し受けるようになりました。
平成24年、母親の介護のためパートを退職し、平成26年に母親を看取ったのち、ようやく一段落したかに見えた平成27年、糖尿病を原因とする急性心筋梗塞を発症し、緊急搬送先の病院で冠動脈ステント留置術を受けることになりました。以後、心不全症状や不整脈(Ⅱ度房室ブロック)による息切れ・ふらつき・立ちくらみが続き、日常生活動作を行うだけでも精一杯という状態になっていきました。視力についても改善は見られず、令和5年時点では両眼とも視力が著しく低下し、着替えや歩行など日常の動作にも家族の支えが必要な状況となっています。現在は、知人に頼まれたときに限り、負担の少ない農作業を午前中2〜3時間ほど手伝う程度で、それ以上の就労は難しい状態が続いています。こうした経過の中で、当事務所へ障害年金請求のご相談・ご依頼をいただきました。
対 応
初回のヒアリングでは、糖尿病の発症から現在までの治療経過に加え、心疾患と眼疾患それぞれの症状の推移、退職に至った経緯や現在の生活状況について詳しくお伺いしました。
今回の案件では、初診日(平成8年4月6日、当時の中野病院)の証明が大きな課題となりました。同院はその後「なかのクリニック」として存続していたものの、当時のカルテはすでに廃棄されており、通常の受診状況等証明書を取得することができませんでした。そこで、電話でカルテの廃棄事実を確認したうえで「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成し、他院に残っていた入院診療録などの代替資料を添えて初診日を立証する方針としました。
また、心疾患と眼疾患はいずれも糖尿病を原因とする一連の病態であるため、それぞれ様式の異なる診断書(循環器疾患用・眼の障害用)を医療機関に依頼し、2つの障害を併せて評価していただけるよう申請書類を整えました。障害認定日(平成9年10月6日)頃はまだ心疾患を発症しておらず、眼の症状も軽度だったため、認定日時点での等級認定は難しいと判断し、現在の重い症状に基づく事後重症請求の方針といたしました。
提出後、日本年金機構から眼の診断書について現症日の記載漏れ・押印漏れの指摘を受け返戻となりましたが、速やかに医療機関へ追記を依頼し、令和5年12月に再提出しました。その結果、令和6年1月、障害基礎年金1級・障害厚生年金1級の認定を受けることができました。長年のカルテが残っていない事案でも、代替資料を丁寧に積み上げることで初診日を立証できることを改めて実感した事例です。
糖尿病網膜症・虚血性心疾患に関するポイント
糖尿病の合併症と初診日の考え方
糖尿病を長期間患うと、糖尿病網膜症や虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞等)、糖尿病性腎症などさまざまな合併症が現れることがあります。障害年金の認定では、これらの合併症は原因となった糖尿病と相当因果関係があるとされ、初診日は糖尿病について初めて医師の診療を受けた日として扱われるのが一般的です。今回のケースでも、心疾患・眼疾患のいずれについても、糖尿病の初診日が共通の初診日として取り扱われました。
複数の障害を併せ持つ場合の等級認定(併合認定)
一つひとつの障害では上位等級に該当しなくても、複数の障害を併せ持つ場合には、それぞれの障害の程度を組み合わせて評価する「併合認定」という考え方があります。単独では2級相当とされる障害であっても、他の障害と併せて考慮することで、より重い等級に認定されることがあります。今回のケースでも、眼の障害と循環器疾患の障害をそれぞれ診断書で評価いただいたうえで、両者を併せて1級の認定に至りました。
古い受診記録が残っていない場合の初診日の証明
初診から長期間が経過している場合、当時のカルテがすでに廃棄されているケースは少なくありません。その場合は、受診状況等証明書に代えて「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成したうえで、入院診療録やお薬手帳、健康診断の記録など、初診日を推定できる代替資料を組み合わせて証明していく方法があります。今回のケースでも、この方法により初診日を立証することができました。
関連動画
今回のように初診日から長期間が経過し、当時のカルテが残っていないケースでの初診日の考え方について、詳しくはこちらの動画もあわせてご覧ください。
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