慢性腎不全(糖尿病性腎症・人工透析)
障害の状態
- 週3回・1回3時間の血液透析療法を実施中(シャント造設による人工透析)
- 血清クレアチニン約8.2mg/dl、血清尿素窒素約52mg/dlなど腎機能の著しい低下を示す検査値
- 一般状態区分「イ」に該当し、肉体労働は制限されるが歩行や軽労働は可能な状態
- 医師所見「軽作業は可能だが重労働は控えるべき」「腎機能は生涯にわたり透析での代替が必要」
- 身体障害者手帳(じん臓機能障害)を取得済み
相談までの経緯
ご相談者様は、平成18年4月頃から股関節付近の肌あれが気になっていましたが、しばらく様子を見ていたものの改善が見られなかったため、同年8月に地元の泌尿器科を受診しました。その際、精密検査の必要性を指摘されて総合病院を紹介され、当日のうちに総合診療科を受診。院内での検査では特に異常が見つからなかったものの、その後の検査で血糖値やHbA1cの数値の異常が判明し、糖尿病内科を紹介受診したところ、2型糖尿病と診断されました。同年10月から11月にかけて教育入院を行い、退院後もしばらく通院を継続していましたが、自覚症状が特になかったことから、ご本人様の判断で通院を中断してしまいました。
その後は約5年にわたり症状もなく過ごしていましたが、平成27年頃から体調の変化を感じるようになり、近隣のクリニックを受診したところ、再び糖尿病と診断され、月1回の通院と投薬治療を再開しました。その後も長期間にわたり同じクリニックへの通院を続けていましたが、令和4年4月の検査で腎臓の数値が急激に悪化していることが判明し、精査のため以前受診していた総合病院を再度紹介受診することになりました。受診の結果、すでに末期腎不全の状態にあることが判明し、慢性腎不全と診断されました。
その後も腎機能の悪化は止まらず、令和4年7月にシャント造設のための入院・手術を経て、同年9月から人工透析が導入されることとなりました。以降は透析医療機関を変えながら、週3回の血液透析を続けつつ、建設会社での勤務も継続されていましたが、透析と仕事を両立させる生活の中で今後の生活設計を考えるようになり、障害年金の請求について当事務所へご相談をいただきました。
対 応
初回のヒアリングでは、平成18年の糖尿病発症から人工透析導入に至るまでの治療経過に加え、建設会社に勤務しながら週3回の人工透析を続けている就労状況について詳しくお伺いしました。今回の請求で特に注意を要したのは初診日の確定です。最初に取得した受診状況等証明書は、平成18年8月の受診時に主訴となっていた皮膚症状に関するものでしたが、日本年金機構の審査の結果、「請求傷病の慢性腎不全と当該受診状況等証明書の傷病には相当因果関係がなく、診断書の記載から慢性腎不全の原因は糖尿病と判断される」との理由で返戻を受けました。あわせて、診断書の人工透析開始日の欄に記入漏れがある旨もご指摘をいただきました。
そこで、糖尿病の診断を受けた糖尿病内科から、糖尿病を傷病名とする受診状況等証明書をあらためて取得して提出するとともに、人工透析開始日については既存資料を参考資料として添付することで対応しました。この結果、初診日は平成18年9月の糖尿病内科受診日と確定し、そこから1年6か月後の障害認定日時点では症状が軽度であったため、現在の症状をもとに請求する事後重症請求の方針でお手続きを進めました。
申立書の作成にあたっては、糖尿病の発症から通院の中断・再開を経て腎不全の悪化、人工透析導入に至るまでの経過を年月順に整理し、就労を続けながら透析を受けている実情もあわせて記載しました。補正資料の提出を経て、障害厚生年金2級(あわせて障害基礎年金2級)の認定を受けることができました。最終的な障害の原因となった傷病と、初診時の受診理由が異なるケースでは、初診日を証明する資料の選び方に特に注意が必要であることを、あらためて実感した事例です。
慢性腎不全に関するポイント
初診日と傷病の因果関係について
障害年金の初診日は「障害の原因となった傷病について、初めて医師の診療を受けた日」とされています。最終的な障害の原因となった傷病と、初診時に受診したきっかけとなった症状が異なる場合、初診日を証明する受診状況等証明書は、原因となった傷病についての受診記録に基づくものである必要があるとされ、この点が審査で問題となることがあります。今回のケースでも、当初提出した受診状況等証明書が請求傷病と因果関係のない傷病についてのものであったため返戻となり、原因である糖尿病の受診状況等証明書を追加取得することで初診日が確定しました。
人工透析と障害認定日について
人工透析を導入した場合、原則として透析開始日から3か月を経過した日を基準に、その時点の状態から2級に認定されるのが一般的な取扱いとされています。もっとも、初診日がそれよりずっと前の傷病にさかのぼって認定される場合は、通常どおり「初診日から1年6か月後」が障害認定日とされるため、透析導入のタイミングと障害認定日が一致しないことがあります。今回のケースも、初診日である糖尿病発症時から1年6か月後の時点では症状が軽度であったことから、事後重症請求の方針で手続きを行いました。
就労を続けながらの請求について
障害年金の請求は、就労を続けながらでも行うことができるとされています。人工透析を受けながら仕事を継続している場合でも、治療や日常生活における制約が診断書・申立書で適切に伝われば、等級に応じた認定を受けられることがあります。今回のケースでも、建設会社での勤務を続けながらの請求でしたが、障害厚生年金2級の認定に至りました。
関連動画
今回のケースのように、提出した書類が返戻(差し戻し)となることは珍しくありません。返戻の内容にはどう対応すればよいのか気になる方は、こちらの動画もあわせてご覧ください。
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