COVID-19罹患後症状(コロナ後遺症)
障害の状態
- 慢性的な倦怠感・頭痛・胸背部痛が持続し、労作により症状が増悪する
- 身のまわりのことはある程度できるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床している状態
- 嗅覚は罹患前の約1割、味覚は約5割程度しか感じられない感覚障害がある
- 記憶障害・集中力の低下(いわゆるBrain Fog)により、直前の会話の内容も忘れてしまう
- 手指のこわばりにより、着替えや洗濯物干しなど単純な動作にも強い苦労を伴う
相談までの経緯
ご相談者様は、令和3年7月24日の夜に突然の発熱と激しい倦怠感に見舞われました。当時は新型コロナウイルス感染症が急拡大していた時期で一般の医療機関をすぐには受診できず、7月26日にようやく地域の医療機関の発熱外来を受診されました。検査の結果、新型コロナウイルス感染症の陽性が判明し、同月28日から入院のうえ抗ウイルス薬やステロイドによる治療を受け、8月9日に退院されています。
しかし退院後も体調は元に戻らず、胸や背中を常に神経を引っ張られるような痛み、酷い倦怠感、頭痛、手指のしびれやこわばり、耳鳴り、喉の違和感、嗅覚・味覚障害など、多岐にわたる症状が続きました。夜も眠れない日が続いて眠剤を毎日のように服用するようになり、耳鼻科や脳神経内科も受診されましたが、いずれも特に異常所見は見つかりませんでした。発症後は休職状態が続き、朝は目が覚めてから起き上がるまで1〜2時間ほどかかり、階段の上り下りにも手すりが欠かせないなど、常に重い荷物を背負っているかのような体の重さを抱えながらの生活となりました。ご家族に心配をかけたくないという思いから無理をして家事を手伝おうとしても、すぐに疲れ果ててしまい、一日の大半を横になって過ごさざるを得ない状態が長く続きました。
時間の経過とともに、右手の指がくっついて離しにくくなる、右足に力が入りにくくなり杖が必要になるなど、新たな症状が現れて増悪する場面もありました。就労中の感染で労災保険の給付にも関わる案件であったことから、ご本人様は障害年金の請求にあたり専門的なサポートが必要と考え、当事務所へご依頼くださいました。
対 応
初回のご相談では、発症からこれまでの受診歴・治療内容、日常生活や就労状況について詳しくお伺いしました。初診日は令和3年7月26日で、この点は医療機関の診療録上「診療録で確認」の扱いとなったため、初診日証明について大きな支障はありませんでした。
今回のケースで特有の課題となったのは、「COVID-19罹患後症状(いわゆるコロナ後遺症)」という比較的新しい傷病であるため、専用の診断書様式が存在しない点でした。そのため、倦怠感・痛み・しびれ・感覚障害等の多岐にわたる自覚症状の内容を踏まえ、「血液・造血器・その他の障害用」の診断書様式を用いて作成いただく方針としました。また、勤務中に感染したことに伴い労災保険の給付も受けていたため、年金請求書上の「傷病の原因は業務上か」の記載や第三者行為事故状況届の内容を、実態に即して正確に整えることも重要な論点でした。
障害認定日(令和5年1月26日)時点の状態に基づき、認定日請求の方針で申立書・診断書を整え、令和5年8月30日に請求書を提出しました。提出後、日本年金機構からは、疲労・倦怠の程度を客観的に確認するための「慢性疲労症候群のPS値」に関する追加の医師照会への対応と、請求書の業務上該当欄の訂正等を求める返戻があったため、速やかに医療機関への照会や書類の補正を行い、再提出いたしました。
審査の結果、令和5年11月30日付で障害基礎年金・障害厚生年金2級(15号)が認定され、認定日にさかのぼって遡及分を含む年金を受給されることとなりました。診断名だけでは判断がつきにくい症状であっても、日常生活・就労への支障の実態を具体的に整理して伝えることの重要性を改めて実感した事例です。
COVID-19罹患後症状(コロナ後遺症)に関するポイント
専用の診断書様式が存在しない
COVID-19罹患後症状(コロナ後遺症)は、既存の診断書の傷病別分類に含まれていないため、症状の内容に応じて「血液・造血器・その他の障害用」など既存の様式の中から適切なものを選んで作成してもらう必要があるとされています。今回のケースでも、多岐にわたる自覚症状を踏まえてこの様式を用いました。
検査上の異常が乏しくても認定される場合がある
障害年金の認定にあたっては、血液検査や画像検査等で明確な異常所見が乏しい場合でも、日常生活能力の低下や就労状況といった実態が総合的に評価されます。今回のケースでも、他覚的な異常所見に乏しい中、日常生活・就労への支障の程度を具体的に伝えることが重要でした。
業務上の傷病は労災保険との調整が必要になることがある
業務に関連して発症した傷病の場合、労災保険等の給付との調整や第三者行為事故状況届の提出が必要になることがあります。今回のケースでも、労災保険の給付状況を踏まえて年金請求書の記載を訂正する対応が必要でした。
関連動画
今回のケースでは、日本年金機構から追加の医師照会や記載訂正を求める「返戻」への対応が必要になりました。返戻の重要度の見分け方や対応のポイントについては、こちらの動画もあわせてご覧ください。
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