特発性拡張型心筋症
障害の状態
- 心エコー検査で左室駆出率(EF)29%、うっ血性心不全・拡張型心筋症の所見
- 心機能分類(NYHA)II度、軽労働や座位作業に制限を受ける段階
- 少しの移動でも息切れがあり、階段の昇降や立ち仕事が困難
- 重い荷物を持てず、掃除など体力を要する家事もできず、両親が定期的に支援
- 一般就労は困難で、1日4時間程度、就労継続支援A型事業所に通所
相談までの経緯
ご相談者様は、令和3年9月頃から息切れの自覚症状が出るようになりました。同年9月上旬、近隣のクリニックを受診したところ、当初は気管支喘息の疑いと診断され、投薬による治療が行われましたが、症状の改善はみられず、酸素飽和度の低下や息切れの悪化が続きました。もともと別の持病で通院していた総合病院の呼吸器内科に紹介となって受診しましたが、それでも症状はさらに悪化したため、同院の循環器内科へ改めて紹介されることになりました。
令和3年10月8日、循環器内科を受診したところ、うっ血性心不全と診断され、その日のうちに入院・精密検査となりました。心臓カテーテル検査などを経て特発性拡張型心筋症の確定診断を受け、同年11月2日に退院されました。退院後は月1回のペースで通院と投薬治療を継続していましたが、少しの移動でも息切れがするような状態が続き、階段の昇降や立ち仕事、重い荷物を持つといった動作が難しくなりました。掃除など体力を要する家事も自分では行えず、休日に両親に来てもらい生活面の支援を受ける生活が続いていました。
一般的な形での就労は難しいと判断し、就労継続支援A型事業所に1日4時間程度通所して、できる範囲の作業を行うようになりましたが、作業後には強い疲労感が残ることも少なくありませんでした。あわせて、心臓機能障害として身体障害者手帳4級の交付も受けられています。心臓の機能低下により生活・就労の両面で大きな制限を受ける状況が続く中、障害年金の制度を知り、当事務所へご相談くださいました。
対 応
初回のヒアリングでは、発症から確定診断に至るまでの受診経過、現在の通院・服薬状況、そして就労継続支援A型事業所への通所状況などを詳しく確認しました。
今回のケースで特に重要な争点となったのが、初診日の確定でした。ご相談者様は症状が出始めた当初、近隣のクリニックで気管支喘息の疑いという診断を受けており、その後に受診先を移った医療機関で特発性拡張型心筋症の確定診断を受けています。前医と後医とで診断名が異なっていたため、両者を同一の傷病として扱うべきか、初診日をどちらの医療機関への受診日とすべきかを慎重に検討する必要がありました。当事務所では、前医(気管支喘息疑いとして受診したクリニック)から受診状況等証明書を取得したうえで、実際の症状経過や検査所見を確認し、特発性拡張型心筋症としての初診日は、確定診断に至った医療機関への受診日として整理する方針としました。これにより、初診日時点で厚生年金保険に加入していたことが確認でき、障害基礎年金に加えて、より保障の厚い障害厚生年金としての請求を行うことができました。
診断書の作成にあたっては、心エコー検査の左室駆出率(EF)や心機能分類(NYHA)、日常生活・就労状況といった認定基準上重要となる所見が漏れなく記載されるよう、医療機関への情報提供を行いました。病歴・就労状況等申立書についても、発症から現在までの経過や、就労継続支援A型事業所での通所状況、家事への支障の程度が実態に即して伝わるよう作成し、令和5年7月に請求書を提出しました。審査の結果、障害厚生年金1級(障害基礎年金1級併給)が認定され、無事に受給に至りました。心疾患は検査数値だけでなく、初診日の整理が結果を左右する重要な要素であることを改めて実感した案件です。
特発性拡張型心筋症に関するポイント
複数の医学的所見を総合評価した等級判定
拡張型心筋症などの心疾患は、障害年金の認定において、心エコー検査による左室駆出率(EF)や心機能分類(NYHA)、日常生活能力の程度など、複数の医学的所見を総合的に評価して等級が判断されるとされています。今回のケースでも、EFの数値や日常生活・就労への制限の程度が、1級の認定における重要な判断材料となりました。
診断名が変わった場合の初診日の特定
障害年金の請求では、最初に医師の診断を受けた日(初診日)がどの傷病に基づくものかによって、加入していた年金制度(国民年金か厚生年金か)が変わり、受給できる年金の種類や金額に大きな差が生じることがあるとされています。診断名が途中で変わった場合や、複数の医療機関を経由した場合には、それぞれの受診状況を丁寧に確認し、初診日を正しく特定することが重要です。今回のケースでも、この考え方に基づき、確定診断に至った医療機関への受診日を初診日として整理しました。
就労継続支援A型事業所での就労と障害年金
就労継続支援A型事業所は雇用契約を結んで働く福祉サービスですが、一般企業への就労と比べて労働時間や作業内容に配慮がなされていることが多く、障害年金の認定においては、就労の形態や支援の有無も日常生活能力を判断する材料の一つとされています。今回のケースでも、通所日数や作業後の身体的負担の大きさが、日常生活・労働能力の制限を裏付ける材料となりました。
関連動画
今回のケースのように、複数の医療機関を受診し、診断名が異なる場合の初診日の考え方について詳しく知りたい方は、こちらの動画もあわせてご覧ください。
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