自閉症スペクトラム障害・うつ病
障害の状態
- 日常生活能力の判定は多くの項目で「助言や指導が必要」、金銭管理・買い物は1人ではできない状態
- 日常生活能力の程度は4段階中の(4)「身のまわりのことも多くの援助が必要」
- 身体が鉛のように重く外出が困難で、引きこもりがちな生活が続いている
- 兄弟の定期的な訪問(月2~3日程度)や居宅介護サービスを利用し、辛うじて一人暮らしを継続
- 外出先で人を見ると軽度のパニック症状が生じることがある
相談までの経緯
ご相談者様は、乳幼児期の健康診断では特に指摘を受けていなかったものの、幼少期から潔癖症の傾向があり、他の子どもたちが泥遊びをしていても自分だけは加わらず、一人で遊ぶことが多いお子様でした。小学校入学後も友人関係を築くことが難しく、同級生からのいじめや孤立を経験し、忘れ物の多さから何度も確認をする癖が生じるようになりました。中学・高校でも対人関係の苦手さは変わらず一人で過ごすことが多い一方、受験期には過度な負荷がかかり、パニックのような症状や思考が止まったような感覚を覚えることがありましたが、当時は病識がなく医療機関を受診することはありませんでした。
高校卒業後、大学受験は思うようにいかなかったものの、公務員試験に合格して地方公務員として採用されました。就職後は統計調査に関する業務を担当し、繁忙期には月120時間程度の残業が続くこともある激務の中で、令和2年6月頃から不安、不眠、焦燥感、抑うつ気分が現れ、同年8月に医療機関を受診し、うつ病と診断されました。その後も激務は続き、令和3年からは感染症対応関連の業務に従事することになり、通院は不規則にならざるを得ず、強い希死念慮に襲われることもありました。一時期は姉と同居して家事を代行してもらっていましたが、その後は一人暮らしとなり、家族に定期的な支援を頼らざるを得ない状態が続きました。
令和4年9月頃から症状はさらに悪化し、同年10月から休職に至りました。ご本人が主治医に年金請求について相談したところ、一人暮らしであることを理由に「受給は難しいのではないか」と言われ、診断書の作成を一度は断られてしまったといいます。この経験から一度は請求を諦めかけていましたが、その後、当事務所へご相談くださいました。
対 応
初回のヒアリングでは、発病から現在までの受診状況、休職に至った経緯、単身での生活状況などを詳しくお伺いしました。主治医から一度は診断書の作成を断られていたご経緯があったため、まずは障害年金制度の仕組みと、単身生活であることが直接受給の可否を左右するものではないことを丁寧にご説明し、あらためて医師にご相談いただけるようサポートいたしました。
今回の傷病は、幼少期からの対人関係の困難などの特性を背景に、過重労働をきっかけとして二次的にうつ病を発症したという経過であったため、自閉症スペクトラム障害を主傷病、うつ病を関連する経過として整理し、初めてうつ病の診療を受けた令和2年8月5日を初診日として申立てを行う方針としました。障害認定日(初診日から1年6か月後の令和4年2月5日)から3か月以内に受診歴があることが確認できたため、認定日時点の状態を証明する診断書もあわせて取得し、認定日請求を軸としつつ、万一該当しない場合に備えて事後重症請求も同時に請求する形を取りました。
請求書類の提出後、共済組合より治療期間全体の診療録(カルテ)の写しの提出を求められたため、通院先医療機関に対するカルテ開示請求の手続きを代行し、追加資料として提出しました。また、添付書類の一部不備により一度返戻を受けましたが、速やかに不備を解消して再提出しました。その結果、障害厚生年金3級の受給が認められました。今回の経験を通じ、単身生活であることを理由に請求自体を諦めてしまう方が少なくないことを改めて実感し、あきらめずにご相談いただくことの大切さを痛感した事例となりました。
自閉症スペクトラム障害・うつ病に関するポイント
成人期に診断される発達障害と初診日の考え方
自閉症スペクトラム障害などの発達障害は、症状の特性上、本人や周囲が生きづらさに気づかないまま成人期を迎え、就労等をきっかけに初めて精神科を受診するケースが少なくありません。この場合、発達障害そのものの受診日ではなく、関連して現れた症状(不安、抑うつ等)で初めて医師の診療を受けた日が初診日として取り扱われることがあります。今回のケースでも、幼少期から対人関係の困難などの特性がみられたものの、実際に医療機関を受診したのは過重労働によって二次的にうつ病を発症した時点であったため、その受診日を初診日として整理しました。
認定日請求と事後重症請求を同時に見込む実務
障害年金には、障害認定日(初診日から1年6か月を経過した日)時点の状態で請求する「認定日請求」と、その後症状が悪化した時点で請求する「事後重症請求」の2つの方法があります。認定日時点の状態を証明する診断書が入手できる場合には、まず認定日請求を試み、万一その時点では等級に該当しないと判断された場合に備えて事後重症請求もあわせて請求しておく方法が用いられることがあります。今回のケースでも、認定日から3か月以内の受診歴が確認できたことから認定日請求用の診断書もあわせて取得し、双方を視野に入れた請求を行いました。
公務員の障害厚生年金(共済組合)における審査実務
障害年金の審査では、診断書の内容の裏付けとして、通院先の医療機関に対する診療録(カルテ)の写しの提出を求められることがあります。特に公務員の場合、共済組合が実施機関となり、独自の事務取扱要領に基づいて追加資料を求められるケースがあります。今回のケースでも、審査の過程で治療期間全体のカルテの写しの提出を求められたため、医療機関に対するカルテ開示請求の手続きを行い、追加資料として提出しました。
関連動画
「一人暮らしだから障害年金は受給できない」と思い込み、請求をためらってしまう方は少なくありません。同じような不安をお持ちの方は、こちらの動画もあわせてご覧ください。
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