知的障害・注意欠陥多動性障害(ADHD)
障害の状態
- IQ54で軽度知的障害があり、ADHD(注意欠陥多動性障害)も重複して診断されている
- 自動車免許の取得試験に11回挑戦してようやく合格したが、その後も接触事故を繰り返し運転を止められている
- 感情の起伏が激しく、人前でも急に涙が止まらなくなることがあり対人関係の構築が難しい
- 過食による体重増加が20kg以上に及び、食事・清掃・洗濯など家事全般が一人でできない
- 単独での通院・外出・行政手続きが困難で、常に家族の付き添いが必要
相談までの経緯
ご相談者様は、幼児期から落ち着きがなく多動な様子が見られ、家庭や幼稚園で度々手のかかるお子様として育ちました。小学校では通常学級に在籍していたものの、授業内容の理解や課題の提出が難しく、放課後学習でのフォローを受けながらも、じっとしていられずに落ち着かない状態が続きました。中学校でも学業や対人関係の困難は解消されず、感情のコントロールがうまくいかず問題行動が目立つようになり、高校進学後は初日から通学が難しくなったことから、医療機関を受診することになりました。10代半ばで注意欠陥多動性障害(ADHD)の診断を受けましたが、治療への抵抗感から通院は数回で中断してしまいました。
高校は早い時期に中退し、その後は数十か所にわたりアルバイトや仕事を転々とする生活が続きました。長く続いても数か月、短いときには数日で退職してしまうことが多く、安定した就労にはつながりませんでした。生活面でも掃除や洗濯が滞り、部屋の衛生状態が悪化するなど、精神的な不安定さが日常生活にも影響していました。成人してからも医療機関を受診する機会は限られ、数年に一度、単発で相談する程度にとどまっていました。
結婚後は専業主婦として生活し、出産・育児を経験しましたが、家事や育児を一人でこなすことは難しく、ご家族の全面的な支えを必要とする状態が続きました。お子様の発達に関する診断を受けたことをきっかけに精神的な負担が一段と大きくなり、不穏・不安・不眠などの症状が強まったことから、現在の主治医のもとへ通院を開始しました。ご家族の勧めもあって精神障害者保健福祉手帳を取得したものの、生活はご本人の力だけでは成り立たない状況が続いており、当事務所の情報発信をご覧になったことがきっかけで、ご相談をいただくことになりました。
対 応
初回のヒアリングでは、幼少期からの症状の経過、通院歴が少ない背景、現在の生活状況について詳しくお伺いしました。今回の傷病は知的障害・ADHD(発達障害)であり、幼少期から症状が続いていたと考えられることから、初診日の取り扱いが大きな争点となりました。発達障害では、生来的な要因により知的機能の障害が現れているとみなされる場合、初診日を出生日として扱う考え方があり、今回のケースでもこの整理に基づいて申請方針を検討しました。
もっとも、障害認定日(20歳到達日)の前後には医療機関を受診していない期間があり、当時の状態を証明する診断書を取得することができませんでした。そのため、認定日にさかのぼって請求する方針は取らず、現在の症状に基づいて請求する事後重症請求の方針といたしました。初診日を証明する受診状況等証明書については、10代の頃に受診歴のある医療機関に協力を依頼し、無事に取得することができました。
通院歴が少なく、複数の医療機関を転々とされていたご事情を踏まえ、病歴・就労状況等申立書では、発症時期から現在までの生活状況や就労状況の推移をできる限り詳細に記載し、症状の一貫性が伝わるよう工夫いたしました。あわせて、ご家族からのヒアリング内容をもとに、日常生活能力に関する具体的な状況を診断書作成医に情報提供いたしました。
令和5年5月に請求書を提出し、約2か月半の審査期間を経て、障害基礎年金2級の認定を受けることができました。通院歴の乏しさから審査の見通しが立てにくい案件でしたが、丁寧な資料作成によりこれまでの生活の困難さを正しく伝えることができた事例と考えております。
知的障害・ADHD(発達障害)に関するポイント
発達障害と初診日の考え方
知的障害や自閉スペクトラム症などの発達障害は、知的機能の障害がおおむね18歳までに現れることが多いとされ、その場合は初診日を生まれた日として取り扱うのが原則です。今回のケースでも、この考え方に基づいて申請方針を検討しました。
障害認定日時点の資料が確保できない場合
障害認定日(原則として20歳に達した日、または初診日から1年6か月を経過した日)の時点で医療機関を受診していない場合、その時点の状態を証明する診断書を取得することができず、認定日にさかのぼった請求(認定日請求)が難しくなります。このような場合には、現在の症状に基づいて請求する事後重症請求の方針を検討することになります。今回のケースも、この整理に基づいて事後重症請求の方針をとりました。
関連動画
今回のケースのように、通院歴が少なく複数の医療機関を転々とされていた場合でも、病歴・就労状況等申立書の書き方次第で症状の経過を正しく伝えることができます。申立書作成のポイントについて、こちらの動画で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
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