右手部不全切断
障害の状態
- 右手は母指のわずかな動き以外、実用性が全くない状態
- 人差し指から小指までは接着しているが運動・感覚が失われ、つまむ・握る動作が右手では全くできない
- 手関節の可動域も、健側(左70°)に対し右35°と大きく制限されている
- 足の指を右手親指部へ移植する手術を含め、事故後8回以上の手術を受けたが機能は回復しなかった
- 身体障害者手帳3級(右手の全ての指の機能全廃、右手関節の著しい障害)を交付されている
相談までの経緯
ご相談者様は40代の男性で、製造業の会社に正社員(一般雇用)として勤務されていました。令和元年12月、勤務中に作業機械のローラーに右手を巻き込まれるという労働災害に遭い、右手の指5本すべてを損傷する重傷を負われました。ただちに医療機関へ救急搬送され、同日中に緊急の再接着手術が行われましたが、母指(親指)は血流が保てず壊死して欠損し、残る4本の指は接着できたものの神経が切断されていたため、動かすことも感覚を取り戻すこともできない状態となりました。
その後も、皮膚の欠損を補うための皮弁形成術、指の変形を矯正する手術、さらにご自身の足の指を右手の親指部分に移植する手術など、事故から請求時までの間だけで8回以上の手術を重ねられましたが、いずれも機能の回復には至りませんでした。令和3年11月には身体障害者手帳3級(右手の全ての指の機能全廃、右手関節の著しい障害)の交付を受けています。事故当初は休職を余儀なくされましたが、通院への配慮や業務内容の見直しを受けたうえで、令和4年9月に職場へ復帰されました。しかし、利き手であった右手がほとんど使えない中、不慣れな左手での作業を強いられる状況が続き、仕事の面でも日常生活の面でも大きな苦労を抱えていらっしゃいました。
こうした状況の中、障害年金の制度について調べる中で当事務所を知り、令和4年12月にご相談・ご依頼をいただきました。
対 応
初回のヒアリングでは、受傷日である令和元年12月26日を初診日として整理し、労働災害による受傷であることや勤務先の厚生年金加入状況を確認したうえで、障害厚生年金・障害基礎年金の同時請求として進める方針としました。初診日から1年6か月が経過した令和3年6月26日が障害認定日にあたるため、認定日時点と請求時点(現在)の両方の診断書をご準備いただき、障害認定日にさかのぼって請求する「認定日請求(遡及請求)」で申請する方針をご説明しました。
診断書の作成にあたっては、右手の指が外形上は接着していても機能はほとんど失われているという、他の切断障害とは異なる特殊な状態を、医師に正確に記載していただけるよう情報提供を行いました。あわせて、病歴・就労状況等申立書には、事故発生の状況、再接着から足趾移植に至るまでの治療経過、休職から職場復帰までの就労状況の変化、日常生活で家族の支援が不可欠であることなどを、時系列に沿って具体的に記載しました。
書類を整えたうえで令和5年1月に年金請求書を提出したところ、同年3月に障害厚生年金2級・障害基礎年金2級の決定を受け、障害認定日にさかのぼって遡及分を含む年金を受給できることになりました。指が接着していても実質的に機能を失っているケースは、診断書上の等級判定が実態と食い違いやすいポイントであり、日常生活・就労両面での支障を具体的に伝えることの重要性を改めて実感した事例です。
右手部不全切断に関するポイント
指が接着していても「機能全廃」と評価される場合があります
肢体(上肢)の障害等級は、指が物理的に残っているかどうかだけで決まるわけではなく、運動機能や感覚機能がどの程度失われているかによって評価されます。外形上は指が接着していても、実際にはほとんど動かせず感覚もない場合には、欠損に準じる重い等級評価がなされることがあります。今回のケースでも、この考え方に基づき、指の機能が実質的にほぼ失われている状態であることを診断書・申立書の双方で具体的に伝えることを重視しました。
労災保険の給付と障害年金は原則として両方受け取れます
業務上の事故によるけがで労災保険から障害(補償)給付を受けている場合でも、原則として障害年金(障害厚生年金・障害基礎年金)は満額支給され、調整(減額)が生じるのは労災保険側の給付とされています。今回のケースも、労働災害による受傷でしたが、この考え方のとおり障害年金は全額支給される形で決定されました。
関連動画
今回のように、障害認定日にさかのぼって年金を請求する「認定日請求(遡及請求)」は、まとまった遡及分を受け取れる可能性がある一方で、要件や進め方に注意が必要です。より詳しく知りたい方は、こちらの動画もあわせてご覧ください。
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