症候性てんかん
障害の状態
- 全身が硬直するけいれん発作(転倒を伴うタイプ)で、発作中の記憶はほとんど無い
- 確認できる発作は2回。服薬を続けていたにもかかわらず、初回から約4年半後に再発し、約2週間入院
- 主治医から車の運転の禁止(約2年間)と就労状況の調整を指示され、通勤には家族の送迎が必要
- 常に家族の見守りが必要で、外出時は必ず同伴者が必要。身辺の安全保持や危機対応には助言・指導が必要と判定
- 発作への不安による不眠、ほぼ毎日続く頭痛、言葉がスムーズに出ず会話が途切れる
相談までの経緯
ご相談者様は、会社員として長年勤務されてきた方です。ある日の朝、突然てんかん発作(全身性の強直性けいれん)を起こして救急搬送され、そのまま入院となりました。検査の結果、左の頭頂葉に悪性の脳腫瘍(びまん性星細胞腫)が見つかり、これが原因の症候性てんかんと診断されました。その後、腫瘍の摘出手術を行うため大学病院へ転院し、開頭手術を受けられました。術後は入院での経過観察を経て、退院とともに元の病院へ再び転院され、化学療法とリハビリも行われました。
その後は月に1回ほどの通院を続け、てんかん薬による発作の予防と、約2年間の経口抗がん剤治療を受けられました。抗がん剤治療が終わった後もてんかん薬は継続して処方され、画像検査などによる経過観察が続きました。日常生活では、万一の発作に備えてご家族の見守りを受けながら過ごされており、最初の発作から約4年半のあいだ、2回目の発作は起きていませんでした。
ところが、服薬を継続していたにもかかわらず、自宅で2回目の発作が起こりました。ご家族が発見して救急搬送され、約2週間入院されています。ご本人は2回の発作とも、発作中の記憶はほとんどなく、ご家族から聞いた話では、口から泡を吹き、全身を硬直させてけいれんしていたとのことでした。
退院後に職場へ復帰されたものの、重い発作が起きたことから、主治医からは車の運転の禁止(約2年間)と就労状況の調整を指示されました。職場では、単独での当番勤務をなくし、業務中は必ず周囲に職員がいる体制とするほか、発作が起きた際の対応マニュアルが整備されるなど、手厚い配慮を受けています。一方で、ご自身での通勤は難しく、出勤のたびにご家族に送迎をお願いする状況が続いていました。日常生活でも常にご家族の見守りが必要で、外出時には必ず同伴者が必要な状態です。また、発作への不安から精神的に不安定になり、不眠やほぼ毎日続く頭痛に加え、言葉がスムーズに出てこず会話が途切れてしまうことも増えていました。
ご自身でも障害年金について調べ、障害厚生年金3級での請求を考えていたものの、発作が年に2回程度という基準の目安に照らすと、現状では満たしていないのかもしれないと悩まれていました。困っていることを箇条書きにして主治医に相談したところ、支給対象になるかは分からないが、希望すれば診断書は作成するとの返事をもらい、手続きの専門家として当事務所にご連絡をいただきました。
対 応
初回のヒアリングでは、初診日が発作で救急搬送された日として明確であること、初診の時点で厚生年金に加入していたこと、通院先が初診の病院と手術を受けた大学病院の2か所のみであることを確認しました。初診日の証明に課題はなく、障害厚生年金での請求が可能と判断しました。
次に検討したのが請求方法です。遡及請求(認定日請求)を行うには、初診日から約1年6か月後の障害認定日時点の診断書が必要ですが、てんかんは治療によって発作が抑制されている期間は認定の対象となりにくく、当時は直近1年間の発作が確認できない状況でした。そのため、認定日時点にさかのぼって認定を受けるのは難しいと判断し、2回目の発作後の現在の状態で請求する事後重症請求の方針といたしました。
てんかんの認定では、発作の重症度や頻度だけでなく、発作と発作の間の精神神経症状、日常生活動作がどの程度損なわれ、どのような社会的不利益が生じているかも重視されます。ご相談者様の場合、発作の回数は多くないものの、重い発作によって、運転、通勤、就労、外出、睡眠など生活の広い範囲に影響が出ていました。そこで、主治医への診断書依頼文書では、診断書作成の参考として病歴・就労状況等申立書や日常生活のヒアリング内容を添付し、とくに現症時の日常生活活動能力及び労働能力の欄に、日常生活や労働への支障を具体的に記載していただけるようお願いしました。
病歴・就労状況等申立書には、2回の発作の状況、治療の経過、職場での配慮の内容、ご家族の見守りや送迎の状況、不安・不眠・頭痛・言葉の出にくさなど、診断書だけでは伝わりにくい生活上の困りごとを具体的に整理して記載しました。作成された診断書には、発作を意識しながらの生活や家族の見守りの必要性、外出時の同伴者の必要性、不眠や言葉が出にくい症状などが反映されており、内容に不備のないことを確認したうえで請求しました。日常生活能力の判定は多くの項目で「できる」とされていましたが、身辺の安全保持及び危機対応については助言や指導が必要とされ、就労についても周囲の見守りや配慮があって継続できている状況が記載されていました。
請求から約1か月半で、障害厚生年金3級に認定されました。年金額は年額約63万円で、約5年後に診断書を提出する更新が予定されています。
発作の頻度が多くないケースでも、発作の重症度に加え、運転制限、通勤の支援、見守りの必要性、就労上の配慮といった生活・就労面への具体的な影響を、診断書と申立書で丁寧に伝えることが重要だと改めて実感した事例です。
症候性てんかんに関するポイント
てんかんは「発作」だけでなく生活への影響も含めて認定されます
症候性てんかんは、脳腫瘍や脳外傷など、原因となる脳の病変が明らかなてんかんをいいます。障害年金では精神の障害用の診断書を使用し、発作のタイプや頻度、発作と発作の間の症状、日常生活や就労への影響を総合して認定されるとされています。今回のケースでも、発作の回数だけでなく、運転制限や見守りの必要性など、生活面への支障を診断書と申立書に反映させることを重視しました。
治療で発作が抑制されている期間は認定の対象になりにくい
てんかんは、抗てんかん薬の服用や手術などによって発作が抑制されている期間は、認定の対象となりにくいとされています。そのため、遡及請求を検討する際は、障害認定日の時点で発作がどの程度起きていたかを確認することが重要です。今回のケースでは、認定日の頃は発作が確認できなかったため、遡及請求を見送り、再発後の状態で事後重症請求を行いました。
働いていても受給できる可能性があります
障害厚生年金3級は、就労しているからという理由だけで対象外になるわけではありません。仕事の内容や勤務時間だけでなく、発作時の対応体制、単独勤務の免除、通勤時の送迎といった周囲の援助や配慮の状況を具体的に伝えることが重要です。今回のケースでも、勤務を続けられているのは職場の手厚い配慮と見守りがあるためであることを、診断書と申立書で明確に示しました。
関連動画
障害認定日にさかのぼって請求する遡及請求の条件や注意点について、より詳しく知りたい方は、こちらの動画もあわせてご覧ください。
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