左下腿壊疽(糖尿病性壊疽による下肢切断)
障害の状態
- 左の下腿を切断しており、下肢の長さは右82cmに対して左64cmと大きな差がある
- 補助用具を使わない状態では、左足での片足立ちができず、屋内でも屋外でも歩くことができない
- 階段の上り下りは、手すりがあってもご自身ではできない
- 切断後は車椅子での生活が中心で、義足を使った歩行練習を続けている
- 小脳梗塞の後遺症によるふらつきなどもあり、リハビリが長期にわたっている
相談までの経緯
ご相談者様は会社員で、一般雇用で勤務されていました。糖尿病の治療は長年続けており、頭痛などの体調不良をきっかけに近くの内科を受診して血糖値の高さを指摘されて以来、1~2週間に1度の通院と投薬を続けていました。その後、主治医が新たに開業されたことに伴い、転院して治療を継続していました。
転機となったのは、仕事中のケガです。職場の資材置き場で、長い資材をトラックに積み込む作業をしていた際、誤って左足の親指付近に資材を落として負傷されました。応急措置をして勤務を続けたものの状態が良くならず、皮膚科を受診して左足の親指の裂傷と診断されました。その後、親指が徐々に黒く変色してきたため再受診されましたが、以後は通院せずに様子を見ていました。
ところが受傷から約1か月後、息苦しさと微熱が続いたのち呼吸困難が悪化し、かかりつけの内科を受診したところ、精密検査が必要と判断されて総合病院へ救急搬送されました。検査の結果、左下肢の壊疽と心不全と診断され、呼吸の補助を受けながら入院となりました。当初は足の切断も視野に入れた投薬治療が行われましたが、入院中に小脳梗塞や腎機能障害も発症したため手術は一旦見送られ、状態が落ち着いたところで、入院から約1か月余りで左下腿の切断手術を受けられました。
術後は入院のままリハビリと義足を使った訓練を続け、入院から約8か月後に別の病院へ転院してリハビリを継続し、その後は介護老人保健施設に入所されました。勤務先は休職の扱いとなり、復職の見通しは立たない状況でした。労災保険の休業補償は受給されていましたが、障害年金の請求をどう進めればよいか分からず、入院中のご本人に代わって、ご家族が公式LINEから当事務所へご相談くださいました。外出が難しい状況でしたので、面談は行わず、LINEでのやり取りを中心に手続きを進めることとなりました。
対 応
ご家族からの聞き取りで最も大きな課題と考えたのは、「初診日」をどこに置くかでした。壊疽のきっかけは仕事中のケガですが、背景には長年治療してきた糖尿病があります。外傷で最初に受診した皮膚科を初診日とするか、糖尿病で最初に受診した内科を初診日とするかで、切断日を障害認定日とする特例が使えるかどうかや、遡及して受給できるかどうかが変わってくるためです。ご家族は「糖尿病があっても、仕事中のケガがなければ壊疽には至らなかった」とのお考えをお持ちでした。
そこで当事務所は、仕事中のケガの受診日を初診日とし、切断日を障害認定日とする認定日請求を主位的な請求として進める方針といたしました。一方で、糖尿病が背景にある以上、年金機構が糖尿病の初診日で判断する可能性も十分にあると考え、請求の準備段階から、糖尿病で最初に受診した医療機関の受診状況等証明書も並行して取得しました。診断書は、切断の状況と歩行・日常生活動作の制限が正確に反映されているかを確認したうえで提出しました。
請求後、年金機構から「請求傷病と糖尿病の因果関係」について、主治医への照会書が届きました。主治医の回答は「糖尿病性壊疽」で、その後、年金機構から「両者には相当因果関係があり、初診日は糖尿病で初めて受診した日と判断する」旨の連絡がありました。あわせて、糖尿病についての病歴・就労状況等申立書などの追加提出も求められたため、これらを作成して対応しました。
ご家族のお気持ちを踏まえ、当初の主張(ケガを初診日とする請求)は維持しつつ、「同時請求についての申立書」を添えて、主位的請求と、糖尿病の初診日を前提とした予備的請求(事後重症請求)を併せて提出いたしました。主位的請求が認められない場合は却下の処分をしていただき、予備的請求を進めていただくよう明記する整理です。
請求から約4か月半で決定の通知があり、主位的請求は初診日が認められず却下となりましたが、予備的請求により、障害厚生年金2級(障害基礎年金2級も併せて)が認定されました。糖尿病の初診日から切断までは1年6か月を大きく超えており、切断日が障害認定日となる特例は使えないため、遡及はなく、請求月の翌月分からの支給となっています。却下となった主位的請求については、審査請求の見通しや費用もご説明し、ご家族と相談しながら進め方を検討しました。労災保険の給付との調整についても整理してお伝えしています。
初診日の候補が複数考えられる事案では、早い段階で複数の初診日の証明書類を揃え、主位的請求と予備的請求の整理を行っておくことが、受給の確保につながると改めて感じた事例です。
糖尿病性壊疽・下肢切断に関するポイント
糖尿病と壊疽は、初診日の判断で一体として扱われることが多い
糖尿病による壊疽や網膜症、腎症などの合併症は、糖尿病との間に相当因果関係があるものとして、糖尿病で初めて受診した日を初診日とする扱いが一般的とされています。ケガがきっかけで壊疽に至った場合でも、背景に糖尿病による血流障害や神経障害があれば、糖尿病が主たる原因と判断されることがあります。今回のケースでも、年金機構から相当因果関係があるとの判断が示されました。
切断の特例は、初診日から1年6か月以内の切断が対象
手足を切断した場合は、初診日から1年6か月以内であれば、切断した日が障害認定日となる特例があります。一方、1年6か月を超えて切断した場合は、原則どおり初診日から1年6か月を経過した日が障害認定日となり、その時点の状態で請求する認定日請求か、現在の状態で請求する事後重症請求かを検討します。なお、一下肢を足関節以上で欠くものは、障害等級2級に該当する例とされています。今回のケースでは、初診日から切断まで長期間が経過していたため特例は適用されず、事後重症請求として決定されました。
初診日が分かれうるときは、主位的請求と予備的請求を併せて検討する
初診日の判断が分かれる可能性があるときは、本来主張したい初診日での請求(主位的請求)と、別の初診日での請求(予備的請求)を、申立書を添えて同時に行う方法があります。主位的請求が認められない場合でも、予備的請求により受給の道を残すことができます。今回のケースでも、この整理により、糖尿病の初診日での年金が決定されました。
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