統合失調症
障害の状態
- 周囲から体臭について悪口を言われているという被害妄想があり、幻覚や思考形式の障害も認められる
- 意欲・気力の減退、自閉、感情の平板化といった陰性症状が目立つ状態
- 食欲がなく1日1〜2食で、体重が15kg減少。入浴は外出前後のシャワー程度、衣服の交換は2週間に1回程度
- 人混みや知人を避け、買い物は人の少ない早朝や深夜のみ。集中力が続かず、勉強も15分続かない
- 日常生活能力の判定7項目はすべて「助言や指導があればできる」。家族・友人の支援と訪問看護がなければ生活が成り立たない
相談までの経緯
ご相談者様は、高校生の頃に周囲から体臭を指摘されたことをきっかけに、自分の匂いが常に気になるようになりました。腋臭症の手術や注射による治療を受けても不安感は消えず、強い不安感や緊張感、気分の落ち込みが続いたため、心療内科を受診されました。
初診の医療機関では神経症と診断され、投薬治療と精神療法を受けましたが、仕事が忙しく通院は月1回程度が限界で、自宅から遠かったことや診察スタイルが合わなかったことから転院されました。次の精神科では自己臭神経症・対人恐怖症と診断されています。その後、派遣社員として長く勤務する中で、技能を高めるために職業訓練を受けることを決めて退職し、転居先のクリニックで不安神経症の診断のもと、精神安定剤を処方してもらいながら通院を続けました。
職業訓練の終了後は条件に合う就職先が見つからず、経験のある元の勤務先に再び就職されましたが、親しい友人を亡くしたことをきっかけに別のクリニックを受診し、抑うつ状態と診断されました。すぐに退職するつもりでしたが、会社から引き止められて数か月在職した後に退職。傷病手当金を受給しながら療養されました。主治医との信頼関係を築くのが難しくなったことに加え、友人から環境を変えることと遠方の医療機関の受診を勧められ、送迎の申し出もあったため、転院を決められました。
転院先の初診時には、友人がまとめてくれた病状のメモを渡して幻聴や幻覚があることを伝え、その後、統合失調症と告げられました。症状は悪化し、食欲がわかず何事にも無気力で、できるだけ人と関わらない生活となりました。実家の近くでは仕事が見つからないことや、母親に迷惑をかけたくない気持ちから単身生活を続け、家族や友人からの物的支援や定期的な訪問、主治医の勧めで始めた週1回の訪問看護に支えられていました。
当事務所には、無料診断とLINEでのご相談をきっかけにご連絡をいただきました。ご相談当初、ご本人様は抑うつ状態で受診した医療機関の受診日を初診日と考えておられました。また、過去の受診歴や保険料の未納が気になり、手続きは難しいのではないかと、一度は諦めかけておられました。
対 応
まず、年金記録の確認だけでも先に行ってみませんかとご提案し、ご納得をいただいたうえでご依頼を受けました。ヒアリングでは複数の医療機関への受診歴を一つずつ整理し、初診日の時点で会社員として厚生年金に加入していたことを確認しました。さらに、それ以前の受診歴も含めて検討したうえで、受診状況等証明書の記載内容から、心療内科を最初に受診した日を初診日として請求できると判断しました。
請求方法は事後重症請求としました。障害認定日の頃は、勤務を続けた後に職業訓練を受講できており、症状が現在ほど重くなかったこと、当時の診断は神経症や自己臭神経症などで、統合失調症と診断されたのは直近の転院後であったことから、現在の状態で請求するのが適切と判断しました。また、転院から日が浅く、診断書の作成には一定の通院期間が必要なため、すぐには診断書を依頼せず、数か月ほど経過をみることにしました。その間に訪問看護の利用開始と精神障害者保健福祉手帳(2級)の取得があり、生活への支障が客観的にも明らかになった段階で、診断書の依頼に進みました。
診断書の依頼にあたっては、食事、清潔保持、金銭管理、通院と服薬、対人関係、安全保持、社会性の7つの場面ごとに日常生活の状況を詳しくお聴きし、病歴・就労状況等申立書とあわせて主治医に参考資料としてお渡ししました。食事は簡単なものしか取れず体重が15kg減ったこと、入浴や着替えが億劫で間隔があいてしまうこと、人の少ない時間にしか買い物に行けないこと、人との関わりを避けるため助けを求めることも難しいことなど、単身生活の実情を具体的に伝えました。
診断書には、被害妄想や幻覚、自閉・感情の平板化・意欲の減退といった症状とともに、家族や友人、訪問看護の支援なしでは日常生活が成り立たないという所見が記載されました。請求手続きの後、約2〜3か月で障害厚生年金2級と障害基礎年金2級の決定を受け、年金額は年額約138万円となりました。あわせて国民年金保険料の法定免除の手続きも行いました。
診断名が変わってきた経過の中でも、初診日を丁寧に整理したことと、単身生活の実情を診断書に反映できたことが、認定の大きなポイントになった事例と考えています。
統合失調症に関するポイント
診断名ではなく、日常生活への支障の程度が重視されます
統合失調症では、幻覚・妄想などの陽性症状や、意欲の低下・感情の平板化などの陰性症状がみられます。障害年金の認定では、診断名そのものよりも、症状の程度や日常生活能力、就労状況などが総合的に判断されるとされています。今回のケースでも、診断書の症状だけでなく、日常生活の具体的な実情を丁寧に伝えることを重視しました。
神経症から統合失調症へと診断名が変わった場合
神経症は、原則として障害年金の認定の対象とならないとされていますが、臨床症状から精神病の病態を示していると判断される場合は、統合失調症などに準じて取り扱われます。診断名が途中で変わっていても、同一の傷病として初診日を判断できるかどうかが重要になります。今回のケースでは、受診歴を整理したうえで、最初に受診した医療機関の受診日を初診日として請求しました。
事後重症請求と年金額
事後重症請求は、障害認定日の時点では障害の状態が基準に達していなくても、その後に症状が重くなった場合に、現在の診断書で請求する方法です。年金は請求の翌月分から支給され、遡及して支給されることはありません。また、初診日に厚生年金へ加入していた場合は障害厚生年金の対象となり、2級以上であれば障害基礎年金もあわせて受給できます。
関連動画
一人暮らしで精神疾患の障害年金を請求する際の考え方や申請のポイントについてより詳しく知りたい方は、こちらの動画もあわせてご覧ください。
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