家族性大脳基底核石灰化症
障害の状態
- 体位を変えると血圧が急に下がり、失神を繰り返す。診察時の血圧は最高84・最低50mmHgと低く、診断書にも「頻回に起立性低血圧や失神を繰り返している」との所見あり
- 立位の保持ができず、平衡機能は「不可能」と判定されている
- 歩行は両手にストックを常時使い、数歩がやっと。車椅子を使うことも多い
- 靴下を履く、ズボンを着脱するなど、日常の動作の多くが自力では非常に困難
- 要介護2の認定を受け、介護ベッドでほぼ寝たきり。日常生活全般を家族の支援に頼っている
相談までの経緯
ご相談者様は家庭に専念された時期を経て、その後は勤務先で働き、厚生年金に加入していました。
ある朝、ベッドに座っていたところで突然失神し、かかりつけの循環器内科を受診されました。心電図などの検査に異常はありませんでしたが、頭部CT検査で脳の両側にある大脳基底核と小脳に石灰化が見つかり、同じ日に脳神経内科へ紹介されました。以前にも別の機会の検査で石灰化を指摘されたことはあったそうですが、当時は症状がなく、治療や経過観察は行われていませんでした。ご家族・ご親族にも同様の画像所見があり、「家族性大脳基底核石灰化症」と診断されました。
その後は月に1回、脳神経内科に通院されましたが、症状は徐々に進行しました。低血圧やめまいで入院することもあり、失神を頻繁に繰り返すようになって、仕事を続けることが難しくなり退職されました。以降は無職の状態が続いています。
状態が大きく変わったのは、腹壁瘢痕ヘルニアで短期間入院した時です。入院をきっかけに症状が一気に悪化し、立っていることができなくなりました。両手にストックを使っても数歩がやっとで、体位を変えるだけで血圧が急降下して失神してしまうため、介護ベッドでほぼ寝たきりの生活になりました。
ご主人は単身赴任中で、週末に帰宅される状況でした。ご本人はほとんど動けない中、難病の進行を前に障害年金の手続きをしたいと、当事務所にご連絡くださいました。主治医も障害年金の請求に前向きでした。
対 応
ヒアリングでは、症状の経過、通院歴、就労状況、ご自宅での生活の様子を詳しく伺いました。初診日は、失神で受診した当日に頭部CTで石灰化が確認され、脳神経内科に紹介された日と整理しました。失神そのものは以前から別の持病(循環器の疾患)の診療の中でも見られていたため、初診日をどこに置くかが論点になり得ましたが、診断書の初診日欄が診療録に基づいて記載されていること、以前の石灰化の指摘は症状も治療もなく経過していたことから、この日を初診日として請求する方針としました。初診日は厚生年金の加入期間中でしたので、障害厚生年金の請求となります。初診の医療機関と診断書を作成する医療機関が同一でしたので、受診状況等証明書の取得は不要と判断しました。
請求方法は事後重症請求としました。初診日から1年6か月を経過した障害認定日の頃は、失神はあったものの就労を続けられる状態で、症状は比較的軽く、認定日請求では認定が難しいと考えたためです。その後、入院を契機に病状が急速に悪化し、現在の状態であれば障害等級に該当する可能性が十分にあると判断し、現在の状態を診断書で示す事後重症請求を選びました。
診断書は肢体の障害用の様式で、主治医に依頼しました。申立書などの参考資料を添え、起立性低血圧による失神や、立位保持・歩行の困難さが診断書に反映されるようお願いしています。診断書作成のための検査では、立位や体位変換に関する項目は実際には行われず、「非常に困難」「不可」と判断されました。受領した診断書は、人体図の記載に不足があったため、医療機関に確認と加筆を依頼し、内容を整えたうえで請求書を提出しました。
提出後、日本年金機構から、ご本人とご主人の住所が住民票上異なる点について照会がありました。配偶者の加給年金を受けるには生計維持関係の確認が必要なため、単身赴任であること、毎月の仕送りがあること、毎週末の帰宅や毎日の連絡があることを整理して、申立書を追加で提出しました。この時期は病状の悪化でご本人が入院されていたため、LINEのやり取りで負担を抑えながら確認を進めました。
請求から約3か月で決定通知が届き、障害厚生年金2級(あわせて障害基礎年金2級)に認定されました。年金額は、配偶者加給年金を含めて年額約138万円です。進行の早い難病では、悪化した現在の状態を診断書に的確に反映してもらうことと、初診日を丁寧に整理することが大切だと改めて感じた事例です。
家族性大脳基底核石灰化症に関するポイント
画像で石灰化が見つかっても、症状が出てから受診した日が初診日になることがあります
大脳基底核石灰化症は、大脳基底核などにカルシウムが沈着する疾患で、画像検査で偶然見つかり、長く症状が出ないこともあるとされています。症状が出ると、不随意運動やパーキンソン症状、ふらつき、構音障害、精神症状、認知機能の低下など、さまざまな症状がみられることがあり、進行する場合もあります。今回のケースでは、以前の検査での指摘と、症状をきっかけに受診した日を区別し、後者を初診日として整理しました。
診断書は、日常生活で最も支障となっている症状に合わせて選びます
障害年金の診断書には、障害の部位や症状に応じた複数の様式があり、主な症状に合わせて選ぶことが大切です。今回は、失神や起立性低血圧に加えて、立位保持や歩行が困難になっていたため、肢体の障害用の診断書で現在の状態を評価してもらいました。
事後重症請求は、悪化した時点で請求できます
障害認定日の時点で障害等級に該当しなくても、その後に症状が悪化し、65歳に達する日の前日までに請求すれば、障害年金を受けられる場合があります。この場合、年金は請求した月の翌月分から支給されます。今回も、症状が悪化した現在の状態をもとに請求しました。
関連動画
症状に合った診断書の種類や選び方について、より詳しく知りたい方は、こちらの動画もあわせてご覧ください。
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