両側特発性大腿骨頭壊死
障害の状態
- 両側の股関節に人工股関節置換術を受けており、診断書では左股関節痛による跛行(足を引きずるような歩き方)がみられる
- 股関節の動く範囲に制限があり、屈曲は左右とも90度、外転は右20度・左30度にとどまる
- 手すりなしでの階段の昇り降りや立ち上がり、屋外の歩行は補助用具なしで可能だが、主治医は重量物の運搬などの重労働は困難と判断
- 術後は障害者雇用として就労しており、人工関節のため就労上も注意が必要で、職場の配慮を受けながら働いている
- 動きに制限を受けるため、転ばないよう常に気をつけており、将来の再置換術の可能性もあり、定期的な通院と検査が欠かせない
相談までの経緯
ご相談者様は高校を卒業してから一つの会社で長年勤務されてこられました。ある日、突然右の股関節に痛みを感じるようになり、しばらく様子を見ていたものの、痛みが徐々に強くなったため、近隣の整形外科を受診しました。
受診先ではレントゲン検査を受けましたが、骨折や骨の変形などの異常は見当たらず、湿布と痛み止めをもらって帰宅しました。その後も痛みは改善せず、再度受診して改めてレントゲン検査を受けたものの、やはり異常は見つかりませんでした。大きな病院で詳しく検査を受けたほうがよいと勧められ、紹介状を書いてもらって総合病院を受診することになりました。
総合病院でもレントゲンでは異常が見つかりませんでしたが、MRI検査の結果、両側特発性大腿骨頭壊死と診断されました。念のためセカンドオピニオンとして大学病院も受診しましたが、診断は同じでした。発症から数か月のうちに右の人工股関節置換術を受け、その約4か月後には左の人工股関節置換術も受けることになりました。手術の前後は仕事を休み、傷病手当金を受給されていました。
手術によって痛みは軽くなり、日常生活や軽易な仕事はなんとか行えるようになりましたが、重労働は難しく、以前と同じようには働けなくなりました。術後は障害者雇用として就労を続けており、現在も半年に1度、総合病院に通院して経過観察を受けています。
障害年金については、友人から「受給できる可能性がある」と聞いたことが相談のきっかけでした。手続きの代行も希望されていたことから、当事務所の公式LINEからご相談をいただきました。
対 応
初回のご相談では、発症から現在までの経過、両側の手術の状況、傷病手当金の受給歴、現在の就労状況を詳しく伺いました。あわせて年金記録を確認したところ、初診日は厚生年金に加入していた時期であり、保険料の納付要件にも問題がなかったため、障害厚生年金での請求が可能であると判断しました。
本件で最も重要だったのは、人工関節を挿入置換した場合の障害認定日の特例です。通常、障害認定日は初診日から1年6か月を経過した日ですが、人工関節を挿入置換した場合は、挿入置換した日が障害認定日とされています。本件では、先に手術を受けた右の人工股関節置換術の日が障害認定日にあたります。そのため、請求時点からは数年さかのぼることになりますが、障害認定日から請求までが年金の時効にかかる前であり、遡って受け取れる期間が失われることもないと判断し、障害認定日にさかのぼる認定日請求(遡及請求)の方針といたしました。請求が障害認定日から長く経過していたため、請求が遅れた事情を整理した申立書も作成しています。また、傷病手当金を受給していた期間との重なりについても、事前にご説明しました。
初診日の証明については、最初に受診した整形外科に受診状況等証明書の作成を依頼しました。診断書は現在の通院先である総合病院で作成していただく必要があったため、依頼に必要な資料を当事務所からご自宅へお送りし、ご本人から診断書の作成と検査日の日程調整をお願いしていただきました。
診断書が手元に届いた後は、記載内容を確認しました。股関節の可動域や日常生活動作の状況に加え、跛行や重労働が困難であることなど、主治医が記載した現在の状態が、障害の状態を的確に示していることを確認したうえで、速やかに請求書を提出しました。病歴・就労状況等申立書には、発症から手術までの経過に加え、術後の障害者雇用での就労状況や、職場の配慮を受けながら働いている実情を具体的に記載しました。
請求から約1か月余りで、障害厚生年金3級に決定しました。障害認定日にさかのぼって認められ、初回の支払いでは約280万円が支給される見込みとなりました。
人工関節は等級の目安が分かりやすい一方で、障害認定日の取り扱いが特殊なため、特例を踏まえて請求しなければ、遡及して受け取れるはずの年金を逃してしまうおそれがあります。就労を続けている方でも、人工関節のように手術日から請求できるケースがあることを、改めて実感した事例でした。
両側特発性大腿骨頭壊死に関するポイント
人工関節は挿入置換日が障害認定日になります
障害年金では、障害認定日は原則として初診日から1年6か月を経過した日とされていますが、人工骨頭や人工関節を挿入置換した場合は、その挿入置換した日が障害認定日とされています。人工関節の場合、障害の程度は原則として3級に該当するとされています。本件でも、この考え方に基づき、右の人工股関節置換術の日を障害認定日として請求しました。
初診日の証明は最初に受診した医療機関で必要です
障害年金の請求では、診断書を書く医療機関とは別に、障害の原因となった傷病で最初に受診した医療機関(初診日)の証明が必要となります。転院している場合は、初診の医療機関に受診状況等証明書を依頼するのが基本です。今回のケースでも、最初に受診した整形外科で証明書を取得しました。
働いていても請求できる場合があります
仕事をしているからといって、障害年金を受け取れないわけではありません。障害の程度は、仕事の内容や職場での配慮の状況、日常生活での支障なども含めて総合的に判断されるとされています。本件でも、障害者雇用で職場の配慮を受けながら就労している状況を丁寧に伝えました。
関連動画
遡及して障害年金を請求できる条件についてより詳しく知りたい方は、こちらの動画もあわせてご覧ください。
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