虫垂がん・腹膜偽粘液腫
障害の状態
- 腹腔内の複数の臓器を切除する大きな手術のあと、抗がん剤による化学療法を長期にわたり継続している
- 抗がん剤の服薬中は発熱・吐き気・だるさのため、食事とトイレ以外はほとんど横になって過ごす
- 休薬期間も症状が続き、1日の半分以上は横になっている。家族の全面的な支援が必要な状態
- 手術後から下痢が続き、痔ろうの痛みや食事の制限、食欲低下もあり、体力の低下が進んでいる
- 診断書の検査では、ヘモグロビン濃度6.2g/dL・赤血球数173万/μLと貧血が顕著。一般状態区分は「エ」(しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床)
相談までの経緯
ご相談者様は右脇腹の痛みと腹部の張りを感じるようになり、かかりつけのクリニックを受診したところ、下腹部に大きな腫瘤と腹水が見つかりました。その日のうちに婦人科のクリニックを受診し、さらに大学病院を紹介され、検査の結果、虫垂がんおよび腹膜偽粘液腫と診断されました。
手術は、腹膜偽粘液腫の治療を専門に行う別の総合病院で受けることになり、腹腔内の複数の臓器を切除する大きな手術と、約1か月の入院を経験されました。退院後は大学病院の消化管外科に通院し、まもなく抗がん剤による治療が始まりました。最初は錠剤を2週間服用して1週間休薬する3週間サイクル、その後は点滴用のポートを造設して、薬の種類を変えながら点滴治療を約2年近く続けました。さらにその後は再び内服に切り替わり、5日間連続で服薬して2日休薬することを2回繰り返し、その後2週間休むという4週間サイクルの治療が続いています。
服薬中は発熱や吐き気、だるさが強く、食事とトイレ以外はほとんど寝たきりの状態になります。体を少しずつ動かせるようになるのは4週間サイクルの後半で、休薬期間中も症状は続き、1日の半分以上は横になっています。手術のあとから下痢も治まらず、手術から1年半以上が経った頃には痔ろうも併発しましたが、抗がん剤治療中のため治療ができず、食事の制限や食欲の低下で体力も落ちていきました。病気が分かって以降は就労できない状況が続き、日々の生活はご家族の全面的な支援に支えられていました。
発病から約4年が経ち、今も治療が続くなか、ご主人様が障害年金の存在を知り、当事務所のWebフォームからお問い合わせをいただきました。ガイドブックを読んでも制度がよく分からず、社会保険労務士への相談の仕方にも迷っていたとのことでした。主治医には障害年金について相談しており、病院の相談窓口にも話をしていましたが、手続きの具体的な進め方までは分からない状況でした。
対 応
初回のヒアリングで、初診日(かかりつけのクリニックの受診日)の時点では配偶者の扶養に入る国民年金の加入者であったことを確認し、障害基礎年金の請求になると整理しました。年金記録を確認したところ記録に問題はなく、保険料の納付要件も満たしていました。初診日の証明のため、初診のクリニックに受診状況等証明書の作成を依頼しています。
請求方法については、障害認定日(初診日から1年6か月を経過した日)から請求時点まで約3年近くが経っており、認定日にさかのぼって請求できる状況でした。認定日よりも前から手術と化学療法が続いていたため、まずは認定日請求を軸とし、認定日の時点で受給権が発生しない場合には、事後重症請求として審査を受けられるよう請求事由確認書を添えて請求する方針といたしました。この方針により、認定日時点と請求時点の2つの診断書を、同じ大学病院に依頼しています。
診断書の依頼にあたっては、ご家族から治療の変更時期や通院の頻度、現在の症状をLINEで詳しく伺い、ほとんど寝たきりに近い生活であること、家族の全面的な援助を要すること、就労が困難であることを整理して主治医にお伝えしました。届いた診断書に現症日の記載の不備があったため、修正を依頼しています。病歴・就労状況等申立書は、受診した医療機関ごとに時系列でまとめ、化学療法のサイクルごとの症状を具体的に記載しました。
請求から約2か月半で結果が届きました。認定日請求の分は、当時の状態が障害基礎年金の対象となる程度には至っていないとして不支給となりましたが、請求時点の状態をもとにした事後重症請求で障害基礎年金2級が認められました。のちに認定の記録を確認すると、認定日頃は一般状態区分が「ウ」、請求時は「エ」と評価されており、時点ごとの違いが結果に表れていました。なお、認定は有期で、約2年後に更新の手続きが予定されています。
がんの障害年金は、診断名だけでなく、検査の数値や治療の副作用、日常生活の制限の程度が総合的に見られます。各時点の状態を診断書に正確に反映していただくことの大切さを、あらためて実感した事例でした。
虫垂がん・腹膜偽粘液腫に関するポイント
がんの障害年金は、全身状態と日常生活の制限で総合的に判断されます
悪性新生物(がん)による障害は、組織所見や悪性度、検査成績、転移の有無、症状の経過や治療の効果、全身の状態や日常生活の制限などを参考に総合的に認定されるとされています。一般状態区分は重要な目安のひとつで、2級の例示としては「ウ」または「エ」に該当するものが示されていますが、区分だけで機械的に決まるわけではありません。今回のケースでも、認定日頃は「ウ」、請求時は「エ」と、時点によって評価が分かれました。
初診日が国民年金の場合、障害基礎年金には3級がありません
初診日に国民年金に加入していた場合の障害年金は障害基礎年金となり、等級は1級と2級のみで3級はありません。厚生年金に加入していた時期に初診日がある場合の障害厚生年金とは、この点が大きく異なります。今回のケースでは、認定日頃の状態は2級に至らないと判断されたため、障害基礎年金では不支給となりました。
認定日請求で認められなくても、事後重症請求で受給できる場合があります
障害認定日の時点で障害の状態が軽い場合でも、その後に悪化して障害の状態に該当すれば、事後重症請求として年金を受給できる可能性があります。認定日請求と併せて請求事由確認書を添えておくと、一度の手続きで両方の請求事由について審査を受けられます。ただし、事後重症請求の年金は請求した月の翌月分からの支給となり、認定日にさかのぼる遡及分は発生しません。今回のケースでも、この考え方に基づいて手続きを進めました。
関連動画
認定日請求(遡及請求)が認められる条件や考え方について、より詳しく知りたい方は、こちらの動画もあわせてご覧ください。
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