拡張型心筋症・完全房室ブロック
障害の状態
- 完全房室ブロックに対して、除細動器機能付き心臓再同期医療機器(CRT-D)を植え込んでおり、心電図は人工ペースメーカ調律
- 心エコー検査で左室駆出率32%、左室拡張末期径58mm・収縮末期径49mm、全周性の壁運動低下がみられ、血液検査のNT-proBNPは3,889pg/mL
- 心機能分類(NYHA)はⅡ度、一般状態区分表は「イ」(軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行・軽労働や座業はできる)
- 息切れ・浮腫がみられ、胸部X線の心胸郭係数は60%
- 主治医の所見は「穏やかな労働、日常生活は可能であるが、中等度の労働で息切れがある」。徐々に心不全が進行する可能性があるとされている
相談までの経緯
ご相談者様は、高校卒業後に入社した会社で長く働いてこられました。きっかけは、会社の健康診断(人間ドック)で心臓の精密検査が必要と指摘されたことでした。地元の病院の循環器内科を受診し、当時は自覚症状が特にないなかで、Ⅰ度房室ブロックと診断されて通院が始まりました。
その後、徐々に症状は進み、通院を始めて約2年後にはⅡ度房室ブロック、その翌年には一過性の完全房室ブロックと診断されました。経過が思わしくないため、紹介を受けて大学病院に転院されました。大学病院では定期的に通院しながら、不整脈に対するカテーテルアブレーション治療も受けて経過をみていましたが、やがて完全房室ブロックと心機能の低下を指摘されました。
主治医からはペースメーカーの装着を勧められましたが、当初はためらいがありました。しかし、むくみや息切れなど体調の変化を自覚するようになり、手術を受けることを決意されました。入院して必要な検査を受けたうえで、CRT-Dの植込み術を受けられています。
術後は2か月に1度ほどの通院を続け、内服と減塩などの食事療法を続けてこられました。階段の昇り降りなど簡単な動作でも息切れがあり、以前は肉体労働が中心だった仕事も、術後は事務作業に変えてもらっています。月に数日は、横になると苦しくなったり、歩くと息苦しくなったりして仕事を休む日もあります。さらに、機器が作動したことから自動車の運転ができなくなり、電車やバスで片道40分ほどかけて通勤されていました。
手術から約2年が経ち、症状は落ち着いて仕事も続けられていたことから、「このような状態でも障害年金の対象になるのだろうか」と疑問に思い、お問い合わせフォームからご相談をいただきました。
対 応
ご相談内容を伺い、まず初診日と年金制度を確認しました。初診の病院を受診した当時、ご相談者様は会社員として厚生年金に加入しており、障害厚生年金の対象となります。年金記録を確認したところ、問題は見当たりませんでした。
次に、請求方法を検討しました。初診から約1年6か月が経過した障害認定日の頃は、Ⅰ度からⅡ度の房室ブロックを経過観察している段階で、心機能は正常とされており、植込み機器も装着していませんでした。そのため、障害認定日の時点の状態で障害年金に該当する見込みは乏しいと判断しました。一方、現在はCRT-Dを装着し、心機能の低下や息切れもみられることから、現在の診断書で請求する事後重症請求の方針といたしました。
初診日の確認のため、初診の病院には受診状況等証明書の作成をお願いし、ご本人様に窓口で依頼していただきました。診断書は、現在の主治医に循環器疾患用の診断書を依頼しました。依頼にあたっては、植込み機器の手術日、心エコー検査やNT-proBNPなどの検査結果、一般状態区分、日常生活や労働能力の状況を漏れなく記載していただけるよう、確認してほしい項目を整理してお渡ししました。
病歴・就労状況等申立書では、健康診断での指摘から房室ブロックの進行、大学病院への転院、CRT-Dの植込みに至る経過を時系列で整理しました。就労状況については、肉体労働から事務作業へ変更してもらっていること、月に数日は体調不良で休むこと、自動車の運転ができず電車やバスで通勤していることなど、働いていても支障が出ている点を具体的に記載しました。
請求から約2か月で、障害厚生年金3級の認定となりました。年金額は年間で約61万円です。認定内容や今後の流れについては、お電話で丁寧にご説明しました。植込み機器を装着し、仕事を続けていても、状態によっては障害年金の対象となりうることを、あらためて感じた事例です。
拡張型心筋症・完全房室ブロックに関するポイント
植込み機器を装着している場合の認定の考え方
心臓ペースメーカー、植込み型除細動器(ICD)、心臓再同期医療機器(CRT)、除細動器機能付き心臓再同期医療機器(CRT-D)などを装着している場合は、その事実を踏まえたうえで、一般状態区分表、心機能分類(NYHA)、心エコー検査や血液検査などの検査所見、日常生活や就労の状況を総合して等級が判断されるとされています。装着していること自体で等級が一律に決まるわけではないため、診断書にこれらの内容が正確に反映されることが重要です。今回のケースでも、診断書に必要な項目が漏れなく記載されるよう、依頼の段階から整理しました。
植込み機器と障害認定日の考え方
初診日から1年6か月を経過する前にペースメーカーやICDなどを装着した場合は、装着した日を障害認定日として請求できる取扱いがあるとされています。一方、装着が1年6か月を経過した後であれば、障害認定日は原則どおり初診日から1年6か月を経過した日となり、その時点の状態から認定日請求の可否を判断します。今回のケースは、装着が障害認定日より後だったため、事後重症請求を選択しました。
手帳の等級との違い、働いている場合の考え方
身体障害者手帳の等級と障害年金の等級は、別々の基準で判断されます。今回のご相談者様も、手帳は重い等級でしたが、障害年金は3級の認定でした。また、働いていることだけを理由に障害年金が受けられなくなるわけではありません。仕事内容の変更や職場の配慮、体調による欠勤の実情などを、診断書や申立書で具体的に伝えることが大切です。
関連動画
ペースメーカーを装着した場合の障害年金の特徴や注意点について、より詳しく知りたい方は、こちらの動画もあわせてご覧ください。
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